ERCP介助で最も重要なこと|術者が処置前に全体像を伝え共有する

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ERCPの介助で最も重要なこととは?と書かれた記事のアイキャッチ画像 医療コラム

この記事では、ERCPの介助についている(就かなければならない)看護師さん、研修医、若手の先生たちに「ERCPの介助につく時に重要なポイント」を共有することを目的としています。

まずはじめにいいますが、ERCPは介助者の力量が処置の成功を左右するといっても過言ではありません。介助者の力なくして、ERCPは成り立ちません。

ただ、これは介助者が一人で責任を背負うべきだ、という意味ではありません。介助の力が発揮できるかどうかは、術者とこれからやっていく「ERCPの全体像から注意点に至るまでの具体的手順のイメージを共有できるかどうか」で決まると考えています。この記事では、その「地図」言い換えれば「全体像」に関する内容です。

術者と介助者、力を合わせて同じ地図をみて同じ方向に進むことがとても重要です。

ERCPの介助者は想像以上に重要!

そして、介助をするうえで重要な考え方は、

術者✖️介助者の力量=ERCPの総合得点

ということです。

ERCPで得られる結果は、術者と介助者の力量の足し算ではなく、掛け算だと思っています。
ですから総合点は、術者の実力を100とすれば、それを超えることもあれば、50から0近くまで落ちることもあるということです。

介助者の力量総合得点(術者を100として)結果
熟練している100を超える術者が実力以上の処置ができる!
ふつう60-100点前後おおむね想定どおりに進む
慣れていない60点以下想定する手順を遂行できない、、、

一番伝えたいのは、介助者の力量が高ければ、総合得点は術者の実力を超えます。これは比喩ではなく、私自身が若い頃に何度も経験したことです。

介助者は見えない力(安心感)を与えることもできる

そして、この掛け算には数値にできない項があります。慣れた介助者が隣にいるときの安心感です。

ワイヤー操作を任せられると分かっていれば、術者は目の前のスコープ操作、カテーテル操作にだけ集中できます。
逆に「何をされるか分からない」「急にワイヤを抜かれるかもしれない」と思いながら操作していると、手技そのものより先に判断力が鈍ります。

この介助者が術者に与える安心感に上限はありません。

介助者は術者の単なる補助ではなく、得点を決めるもう1人の立役者、スポーツでいう「アシスト」ですから、ほんとうに、とっても大事なんです!

最近の私の気づき:介助者と処置の全体像を共有できていない

ERCPの介助についてもらっているとき、デバイス交換のときにどれを使うか分からず遅れる、ガイドワイヤーを保持してほしい場面で手が動いてしまったり、そういう場面に出会うことがあります。

以前の私は、自分自身の成長にばかり意識を向けてきたためか、介助者との処置に対する認識のズレというものにあまり気がつきませんでした。

とても悪いことですが、処置がうまくいかない時に助手の経験不足が要因だと思っていました。でも、実際にはそうではなかったのです。

私が気づいた、術者として足りなかった考え方

介助者は、処置の全体像を知らされていない

何を目指すべきか、処置のゴールが知らされていない介助者は、手元のデバイスだけを見ていて、言われた通りに手を動かします。
そしてこの処置がどこへ向かっているのかを知りません。

地図を持たされていない人に「次の角を右」と言っても、スムーズに動けるはずがないですし、「とりあえずゴール近くのシュートしやすい位置にセンタリングあげといて」、なんて言われたって、そんなの無理ですよね(当たり前汗)。

例えば、「ガイドワイヤーをすすめて」、といっても、急に動かしてしまって胆管を突き破りそうになったり、逆に「引いて」、といったときに急に引いてしまって抜けてしまったり。単に押す、引くといっても、今何をやっているのかが分からないと、「どの程度動かせばいいのか」、「どのくらいのスピードでなのか」、「どのあたりで止まっていればいいのか」、という重要なポイントが共有できないのです。

私たちの施設では、処置前にブリーフィングを行っています。例えば、こんな内容です。

総胆管結石性胆管炎に対してERCPを行います。胆管選択後に胆汁培養の採取、ESTを置いた後でEBSを留置します。処置中に血圧低下や酸素需要の増加、誤嚥リスクもあるので、吸引とバイタル確認をこまめにお願いします。抗血栓薬はないですが出血もリスクです。

これを30秒ほどで話します。

ただ、このブリーフィングは医師が介助についていて、看護師さんは外回りの想定です。

「胆管選択」「EST」「EBS」という単語で、医師の頭の中には使用すべきデバイスが鮮明に浮かびます。造影カテーテルとガイドワイヤーで胆管に入り、胆汁を引くからシリンジが要る、パピロトームに入れ替えて切開し、最後にステントを留置する。ここまでがこのブリーフィングで共有できています。

しかし、普段から処置をしていない看護師さん(もしくは同様に不慣れな若手医師)に同じブリーフィングを行なっても、同じように共有はできません。結果として、伝わっているのは後半のモニタリングの部分だけになります。

介助者がERCPをあまりやっていない看護師さんで、普段と違う外部の病院で同じブリーフィングをやっても、状態が共有できていません。

これはもちろん、私の側のミスということになります。

そこで、介助が看護師さんの場合は、病名と術式ではなくデバイスが入れ替わる順番で話すようにしています。

胆管炎の患者さんで、詰まった胆管に管を通すのが今日のゴールです。
使うデバイスは〇〇トーム(ESTのカテーテル)、△△(カニュレーションのカテーテル)、ガイドワイヤの名称、ステントのサイズと名称です。
①カテーテルとガイドワイヤーでまず胆管を選択します。ここが一番時間がかかると思います。
②胆管に入ったら胆汁を引くので、シリンジをお願いします。
③切開するカテーテルに入れ替えます。
④最後にステントを1本置いて終わりです。
血圧と酸素をこまめに見てください。吸引はいつでも入れるようにしておいてください。

急性胆管炎のERCPの代表的な流れ ① 胆管を選択する 使うデバイス カテーテル+ガイドワイヤー 介助者がすること ワイヤーの張りを保つ 気をつけること ワイヤーを入れすぎない 膵管側は特に慎重に ここが一番時間がかかる ② 胆汁培養を採取する 使うデバイス シリンジ・培養容器 介助者がすること シリンジを渡す 気をつけること ワイヤーの位置を 動かさない ③ 乳頭を切開する 使うデバイス パピロトーム 介助者がすること 処置具を入れ替える 気をつけること 処置具を抜くとき ワイヤーが抜けないように ④ ステントを置く 使うデバイス ステント 介助者がすること 留置を介助する 気をつけること ワイヤーで胆管を 突き破らないように
急性胆管炎のERCPの代表的な流れ(症例により手順は変わります)

情報量はほとんど同じですが、違うのは、「使う具体的なデバイス名称」が分かるという点です。

具体的に使う物品や手順に加えて終わり(or 処置の全体像)が見えると、ある程度落ち着いて処置ができます。①で時間がかかっても、介助者は「いま一番時間がかかるところにいる」と分かっていますから、この差は大きいです。

伝える順番を整理すると、こうなります。

医師向けの言い方介助者向けの言い換え併せて伝えるデバイス名
胆管選択カテーテルとガイドワイヤーで胆管を選択する(一番時間がかかる)カニュレーション用カテーテルとガイドワイヤーの製品名
胆汁培養の採取胆管に入ったらシリンジで胆汁培養を採取するシリンジ、培養容器
EST乳頭を切開するカテーテルに入れ替えるパピロトームの製品名
EBS留置ステントを1本置いて終了ステントの製品名とサイズ

ERCP介助のガイドワイヤー操作については、その都度若手医師や介助についてくれる人たちに伝えていますし、世の中には実際にYouTubeの解説動画がいくつかあります。

私自身も感じていることですが、処置のコツを言語化するのはとても難しいです。しかし、それで終わらせてしまうと、術者もそうですが介助者が育ちません。

少なくとも、その手前にあるもの——今日は何をするのか、どのデバイスを何という名前で使うのか、どこが山場なのか——は、言語化できます。そしてそれは介助者が経験を積んで身につけるものではなく、術者が処置前に伝えておくべきものです。

実際、胆管挿管はERCPで最初にして最大の難関で、難しい症例では30分から1時間かかることもあります。この一点を「ここが一番時間のかかるところです」と先に伝えてあるかどうかで、介助者の体感はまったく変わります。

言語化できない部分を感じ取れる感覚が育つのを待つのではなく、その前に私たち術者が伝えるべきことがあるし、それがこの記事で伝えたいことです。

もう一つ、私が最近は口に出すようにしているのが撤退ラインです。100%の処置を目指しすぎると、無駄に長い時間処置を行うことになりますし、合併症のリスクも高くなります。

分かれ道に立つ2人。まっすぐ進む道は土砂崩れで通行止めになっており、その先に当初のゴールの旗が見える。右には開けた道が伸び、その先の丘に別のゴールの旗が立っている。一人がその道を指差している。
行き詰まることを見越して、途中で目標を変えることもとても重要です。
  • 「胆管に入らなければ、30分で一度切り上げます」
  • 「今日はドレナージまで。採石は次回にします」
  • 「胆管に入らなければ、PTGBDに切り替えます」

など。これを最初に言っておくと、二つ良いことがあります。

一つは、介助者が「まだ続くのか」という不安を抱えずに済むこと。もう一つは、術者である自分が撤退の判断を口に出しやすくなることです。宣言してあれば、引くことが負けだという認識になりにくいでしょう。

そして、介助者から「そろそろ切り上げどきでしょうか?」という言葉も出るかもしれません。処置に集中している術者にとって、決断をする助言をしてあげるのも、介助者の役割です。

処置は予定通りに進まないことのほうが多いくらいです。

胆管に入らなかったり、乳頭の形が思っていたものと違ったり、出血したり、石が硬過ぎて取れなかったりなどなど。

このとき、術者の頭の中ではゴール地点が変更になります。しかし、それを言葉にしないと、介助者の持っているゴールは古いままです。ここでやる処置の内容が共有できず、スムーズな処置が難しくなってきます。

「予定を変えます。規定時間を過ぎても結石除去ができないので、右の胆管にステントを入れて終わります。」

このひと言を入れるかどうかで、その後の数分が(特に介助者にとって)まったく変わります。

普段と違う施設で処置をすると、介助者が不慣れな方だったりしますが、それに応じた処置内容や処置のスピードにしないと、協調作業がうまくいきません。

どうしても自分の力量が上がればあがるほど、介助者に求めるものが相対的に大きくなる。だから落胆するし、処置中に苛立ちが出てくるものです。(未熟者が何いってんだ!?怒 という声が聞こえてきそうですが、、、、、汗)

でも、相手の技量は自分ではコントロールできない変数です。コントロールできるのは、その変数を織り込んだ段取りを自分が組めるか、そして柔軟に対応できるかどうかだけです。

30秒のブリーフィングは、そのための最も安価な投資だと思っています。

「自信ないです」と処置の前に言っていた後輩や看護師さんが、少し難しい処置や、初めての金属ステント留置を無事に終える。そのあとの「うまくいってよかった」という安堵の表情を見ると、こちらまで嬉しくなります。

自分が言語化したイメージがきちんと伝わったのだと思えますし、同時に、術者としても一つレベルアップできたなと思います。

介助者に伝えることは、遠回りのようでいて、術者としての自分を伸ばすことでもある。いまはそう思っています。

今回は

✅介助者がとても重要
✅全体像を共有することが大切

この2点についてお伝えしました。
より詳細な実際の具体的な動きについて、私の考える「コツ」について、それぞれ個別に書いていきます。

  • ERCP介助の最重要スキル|ガイドワイヤーの押し引き(準備中)
  • 術者が介助者に言う言葉の意味|ERCP指示用語辞典(準備中)
  • 処置別・介助者の動き|挿管からステント留置まで(準備中)
  • ERCPで使う略語・用語一覧
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30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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