胃カメラの略語一覧8つ|EGD・GF・GIF・GSの違いを内視鏡専門医が解説

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医療コラム

結論:国際標準は「EGD」です

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の略語で、国際的に標準とされているのは EGD(EsophagoGastroDuodenoscopy) です。

ただし日本の医療現場では、GF・GIF・GS・UGIなど8種類近い略語が併用されています。 どれが間違いというわけではなく、それぞれに歴史的な理由があります。

この記事では消化器内視鏡専門医として、

  • 略語同士の違い(EGDとGF、GSとGF、GFとGIF…)
  • 読み方
  • 職種・診療科によって使う略語が違う理由
  • カルテでの実際の書き方

まで解説します。


胃カメラの略語 早見表

今までにみたことがある略語を掲載します。

略語読み方正式名称意味国際標準
EGDイー・ジー・ディーEsophagoGastroDuodenoscopy食道・胃・十二指腸内視鏡
OGDオー・ジー・ディーOesophago-Gastro-Duodenoscopy同上(英国式)
GSジー・エスGastroscopy胃内視鏡
GIFジー・アイ・エフGastrointestinal Fiberscope消化管ファイバースコープ
GFジー・エフGastrofiberscope胃ファイバースコープ
UGIユー・ジー・アイUpper Gastrointestinal上部消化管(検査全般)
EGDSEsophagogastroduodenoscopyEGDと同義(イタリア等)
上部じょうぶ―(日本語)上部消化管内視鏡

一目でわかる比較表

EGDGSGIFGFUGI
由来検査する臓器検査する臓器機器の型番機器の種類部位の総称
指す範囲食道・胃・十二指腸胃のみ検査全体検査全体上部消化管全般
国際標準××
論文で使える×××
弱点なし範囲が狭い日本固有実態と不一致内視鏡と限らない

上部と下部の対応表

大腸カメラの略語と並べると、関係がすっきりします。

上部(胃カメラ)下部(大腸カメラ)
国際標準EGDCS
英国式OGDCS
ファイバー由来GF / GIFCF
院内の口語上部下部
両方やる場合EGD/CS、「下部後上部」上部後下部もあり。

GFとCFの関係は、EGDとCSの関係と同じと覚えれば混乱しません。


GSとGFの違い

GSは「胃(Gastro)の内視鏡検査」、GFは「胃のファイバースコープ」です。 同じ検査を指しますが、名前の付け方が違います。

  • GS=Gastroscopy … 何をするか(検査)に着目
  • GF=Gastrofiberscope … 何を使うか(機器)に着目

私自身は研修医時代に「GS」と教わりました。短くて書きやすく、今も多くの施設で 使われています。ただしGSは厳密には「胃」しか指しておらず、実際には食道と 十二指腸も観察しているため、検査内容を正確には表していません。


EGDとGFの違い

EGDは国際標準の略語、GFは日本独自の略語です。指す検査は同じです。

EGDGF
由来観察する臓器使用する機器
範囲食道・胃・十二指腸を明示検査全体を漠然と指す
海外通じる通じない
論文使える使えない

海外の医師にGFと言っても伝わりません。EGD、あるいは会話であれば upper endoscopy と言えば確実です。


EGDとGIFの違い

GIFはオリンパス社の内視鏡の型番が由来です。

同社のスコープには「GIF-H290」「GIF-XZ1200」といった型番が付いており、 その頭の「GIF」が、いつしか検査そのものを指す言葉として定着しました。

日本の内視鏡は国内メーカーが世界シェアの大部分を占めており、 現場で毎日その型番を目にするため、自然と広まったのだと思います。

つまりGIFは、日本の内視鏡産業の強さが生んだ、極めて日本的な略語です。 EGDが「検査内容」を表すのに対し、GIFは「機械の名前」を表しています。


GFとGIFの違い

どちらもファイバースコープ由来で、実質的な使い分けはありません。

  • GF=Gastrofiberscope(胃ファイバースコープ)
  • GIF=Gastrointestinal Fiberscope(消化管ファイバースコープ)

強いて言えば、GFは「胃」、GIFは「消化管」と、指す範囲の広さが違います。 ただし現場でこの差を意識して使い分けている人は、ほとんどいないと思います。

なお どちらも「F」=Fiberscope ですが、現在の内視鏡はファイバースコープでは ありません。 今主流なのは、先端にCCDやCMOSを内蔵した電子スコープ (ビデオスコープ)です。光ファイバーで像を運んではいません。 名前だけが技術の世代交代に取り残された形です。


GFとCFの違い

GFは胃カメラ、CFは大腸カメラです。 上部と下部で対になっています。

  • GF(Gastrofiberscope)= 上部消化管内視鏡=胃カメラ
  • CF(Colonofiberscopy)= 下部消化管内視鏡=大腸カメラ

どちらもファイバースコープ時代に由来する日本独自の略語で、 国際標準はそれぞれ EGD と CS になります。


EGDとOGDの違い

同じ検査です。違いは綴りだけです。

  • 米国式:Esophagus → EGD
  • 英国式:Oesophagus → OGD

英国・オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・香港など、 英国式英語圏ではOGDが標準です。

海外の論文でOGDが出てきても、EGDと読み替えて問題ありません。 投稿先が英国系ジャーナルの場合は、OGDが求められることもあります。

「国際標準はEGD」と説明されることが多いのですが、正確には **「米国式がEGD、英国式がOGD」**です。国際標準は1つではありません。


UGIは内視鏡とは限らない

UGI(Upper Gastrointestinal もしくは Upper Gastroduodenal Image(だと主張する医師がいました))は「上部消化管」を指す言葉で、 検査方法までは限定していません。

上部消化管のことを、”upperGI” とも医師間のカンファレンスで言ったりします。

英語圏で “UGI series” と言えば、通常はバリウムによる上部消化管造影 (胃透視)を指します。

そのためカルテに「UGI」とだけ書かれていると、

  • 胃カメラなのか
  • バリウム検査なのか
  • 上部消化管だけを指しているのか

が読み手に伝わりません。内視鏡であることを明示したい場合は、 UGIE(Upper Gastrointestinal Endoscopy) と書けば誤解が生じません。


読み方と、実際に使っている人

読み方から。カルテで見ても、口に出す機会がないと迷いますよね。

GIFは画像形式の「GIF(ジフ)」と字面が同じなので迷う方が多いのですが、 医療現場では「ジー・アイ・エフ」と読みます。

略語は「職種と診療科」で分かれている

私の施設で見ていると、誰がどの略語を使うかには、おおまかな傾向があります。

使う人よく使う呼び方
消化器内科以外の医師GIF(ジー・アイ・エフ), GF(ジー・エフ)
他科の先生・看護師さんGF(ジー・エフ)
私たち消化器内科医「上部」

面白いのは、検査をやっている本人たちが、一番略語を使っていないということです。

私たちは日常会話でほとんど「上部」と言います。 「明日の上部、何件?」「上部で早期胃癌が見つかって」——こんな具合です。 EGDもGIFも、口に出すことはあまりありません。

なぜこうなるのか

推測ですが、その検査との距離が関係していると思っています。

毎日やっている側にとっては、わざわざ区別する必要がありません。 「上部」で十分に通じるし、その方が早い。むしろ「下部(大腸カメラ)」と 対にして使うので、上部・下部という言い方が一番実務に合っているのです。

逆に、たまに依頼する側・介助に入る側からすると、カルテやオーダー画面に 書いてある文字列——つまりGIFやGF——がその検査の「名前」として認識されます。 だから略語で呼ぶ。

略語の使い分けは知識の差ではなく、立ち位置の差なのだと思います。

カルテ上では私たちはEGDと入力します。”胃カメラ”と入力するよりも早いですからね。


カルテでの実際の書き方

ここはよく看護師さんや研修医から質問されるところですので、実例を紹介します。
私が普段使っている書き方です。

予定・実施

本日 EGD 施行
EGD 予定(○月○日)
EGDにて生検2箇所提出

フォローアップ

EGD f/u 1年後(またはEGD1年後フォロー)
EGD 経過観察(前回○年○月)

所見とセットで

EGD:食道・胃・十二指腸に明らかな異常所見なし
EGD:胃体部小弯に潰瘍瘢痕あり、生検(-)

大腸カメラと併記

EGD/CS ともに施行予定

看護記録にはどう書くか

看護師さんからよく聞かれる質問です。

基本は、施設で使われている表記に合わせてください。 医師のカルテがGFなら、 看護記録もGFで揃える。表記が揺れると、後から読む人が混乱します。

ただし、以下は略さずに書くことをおすすめします。

  • 患者さんに見せる文書(説明書、同意書)
  • 他施設に出る文書(サマリー、看護要約)
  • 急変時の記録

そして最も大事なのは、患者さんの前では略語を使わないことです。 「明日GFですね」と言われても、患者さんには何のことか分かりません。 「明日、胃カメラの検査ですね」と言い換えるだけで、安心感がまったく違います。

経過表ではスコープ挿入、抜去と記載するのが一般的。私の施設で看護師さんはEGDよりはスコープ、胃カメラ、といった一般名称を使用しています。


英語で説明するときの言い方

海外の患者さんや、国際学会での言い方も添えておきます。

患者さんへの説明

“We’re going to do an upper endoscopy.”(これから胃カメラを行います)

日常会話では upper endoscopy が最も自然です。EGDやOGDは書き言葉・ 専門家同士の用語で、患者さんには通じません。

医療者同士

“The EGD showed a gastric ulcer.”(胃カメラで胃潰瘍を認めました)

よく使う関連表現

日本語英語
生検するtake a biopsy
鎮静下でunder sedation
前処置preparation
絶食fasting / NPO

私自身、国際学会や英語論文でずいぶん苦労してきました。 医療英語については、実体験をもとに別途まとめています。


なぜ略語がこんなにバラバラなのか

3つの理由があると考えています。

1. 胃カメラが日本発の技術だったから 1950年、東京大学とオリンパスの共同開発で日本に生まれました。 世界に先駆けて普及したため、国際的な用語が固まる前に国内独自の 呼び方が定着してしまいました。

2. 技術の世代交代が速かったから 胃カメラ(フィルム式)→ ファイバースコープ → 電子スコープと機器が 入れ替わるたびに新しい呼び名が生まれ、古い呼び名も消えずに残りました。

3. 施設ごとに教育が閉じていたから 研修医は最初に配属された施設で教わった略語を使い続けます。 こうして施設ごと・世代ごとの流儀が固定化していきました。

どれも先人たちが工夫を重ねてきた結果であって、 間違いだと切り捨てるべきものではないと思っています。


現場ではどう使い分けるべきか

① 論文・国際学会 → EGD一択(英国系ジャーナルならOGD)

② 院内のカルテ → 施設の慣習に合わせる 正しさを主張して自分だけEGDと書き始めると、かえって混乱を招きます。

③ 院外に出る文書(紹介状・退院サマリー)→ EGD 他院の医師が読むので、施設内でしか通じない略語は避けるべきです。

④ 会話 → 相手に合わせる 消化器内科医となら「上部」、他科の先生・看護師さんならGFの方が通りが良い。

⑤ 若手・コメディカルに聞かれたら 「正式にはEGD。ただしこの病院ではGFと書く慣習だから、カルテはGFで揃えてね」 といったように両方伝えるのが一番親切だと思います。


よくある質問

Q. GSとGFの違いは何ですか? どちらも胃カメラを指します。GSは検査(Gastroscopy)、GFは機器 (Gastrofiberscope)に由来する点が違います。

Q. EGDとGFの違いは何ですか? 指す検査は同じです。EGDは国際標準、GFは日本独自の略語で、海外では通じません。

Q. EGDとGIFの違いは何ですか? EGDは観察する臓器に由来する国際標準の略語、GIFはオリンパス社の内視鏡の 型番に由来する日本独自の略語です。

Q. GFとCFの違いは何ですか? GFは胃カメラ、CFは大腸カメラです。国際標準はそれぞれEGD、CSになります。

Q. GIFは何と読みますか? 「ジー・アイ・エフ」です。画像形式のGIF(ジフ)とは読み方が異なります。

Q. 胃カメラは英語で何と言いますか? 会話では upper endoscopy、書き言葉では EGD(英国圏では OGD)です。

Q. GSを使うのは間違いですか? 間違いではありません。国際標準ではないというだけで、日本国内では広く通用します。

Q. 看護記録にはどの略語を書けばいいですか? 施設の表記に合わせるのが基本です。ただし患者さんに見せる文書や 他施設に出る文書では、略さず書くことをおすすめします。


内視鏡の略語をもっと知りたい方へ


内視鏡室で働く方へ:おすすめ書籍

今回の記事は、研修医と看護師さんからの質問をもとに作成しました。略語だけでなく、内視鏡室の仕事を体系的に学びたい方、特に看護師さんや技師さんむけのおすすめ書籍をご紹介します。

看護師さん・技師さんむけ

NTT東日本関東病院の消化器内科部長、大圃(おおはた) 研先生が書いている本。
大圃先生の書籍は、私たち消化器内科医もわかりやすいので愛用していますが、ついにコメディカル向けの書籍がでたか!と感動を覚えたほど。

内視鏡検査や治療のみでなく、観察ポイントや手技の介助で重要なことなど、非常にわかりやすくまとまっていましたので、私自身も勉強になりました。
そして、医師だけではなく看護師の方も著者にいますから、看護目線でもしっかりと深掘り解説されています。本当におすすめ!

なお、看護のポイントという点ではこちらの書籍も看護師さんには非常におすすめ。
ちなみにこちらの書籍は先ほど紹介した大圃先生の書籍でも執筆されている、病院の看護師さんが著者になっています!

出典

  • 日本消化器内視鏡学会「消化器内視鏡用語集」 https://www.jges.net/content/glossary
  • Gastrointestinal Endoscopy Vol.94, No.6(2021)略語一覧

※本記事は個人の見解に基づくものであり、上記団体との提携・監修関係はありません。

他の内視鏡略語記事

なお、他の内視鏡関連の略語もまとめています。もしよければご確認ください。

これらの記事が、皆さんの普段の診療の助けになれば嬉しいです。

おわり

dr-infoblog

30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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