ENBDとEBSの違い|ERCP介助の操作ポイントと術後管理

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医療コラム

ERCPの介助についてくれる看護師さんや、研修医、若手の先生から、よくこう聞かれます。

なんで今日はENBDにしたんですか?

ENBDとEBSって、どうやって使い分けているんですか?

本当によく聞かれます。そのたびに、内視鏡室で同じ話をしています。

裏を返せば、ここは多くの人が気になっているのに、まとまった形ではあまり説明されていない部分なのだと思います。だったら書いておいたほうが早いし、多くの方に届けることができる、それがこの記事を書いた理由です。

この記事では、ERCPでENBDやEBSの留置につく看護師さん、技師さん、そして研修医・若手の先生に向けて、この2本のチューブの違いと、留置のときに介助者が押さえておくべきポイントをお伝えします。

まず呼び方から。EBSはERBDと呼ばれることもあります。施設によって言い方が変わるだけで、指しているものはほぼ同じです。ERCPの現場ではこうした略語が次々に飛び交うので、まとめて確認しておきたい方はERCPで使う用語・略語一覧もあわせてどうぞ。

共通しているのは、どちらも胆管にチューブを留置するという点です。違いはその先にあります。

ENBDは、留置したチューブが乳頭を通って十二指腸、胃、食道を通り、最終的に鼻から体の外へ先端が出てきます。そのため、胆汁を体外に排出することができます。

一方のEBS(ERBD)は内瘻化チューブと呼ばれていて、チューブが十二指腸側に落ちます。胆汁は体内をそのまま流れていくので、生理的な胆汁の循環を作ることができるわけです。

ENBD(外瘻) 胆汁を体の外に出す EBS・ERBD(内瘻) 胆汁を体の中で循環させる 鼻(体外) 食道・胃 十二指腸(乳頭) 胆管 体外へ 胆汁は鼻から体の外へ排出される 鼻(体外) 食道・胃 十二指腸(乳頭) 胆管 ここで止まる 胆汁はそのまま腸へ流れ、体内を循環する
図1 ENBDとEBSでは、チューブの先端がどこまで行くかが違う
ENBDEBS(ERBD)
チューブの先端鼻から体の外へ十二指腸側に落ちる
胆汁の行き先体外に排出される体内を循環する
排液の観察量と性状を毎日見られる見られない

ENBDは胆汁を体の外に出すチューブ。EBSは胆汁を体の中で循環させるチューブ。違いはこの一点から全部導かれます。

この違いが、そのまま「何を目的とするのか、だからどちらを使うのか」につながっていきます。

ENBDを選ぶ場合

急性胆管炎では、ENBDでもEBSでもよいとされています。そのうえでENBDを選ぶのは、たとえばこういう時です。

✅ 胆汁培養を確認したい
✅ 処置後の出血性合併症をすぐに見つけられるよう、情報をくれるドレーンとして留置しておきたい

もうひとつが悪性疾患の場合です。腫瘍があるときは、あとから造影して胆道を評価できるというのもENBDを選ぶ理由になります。さらに膵がんや胆管がんでは、体外に排出された胆汁を採取して胆汁細胞診を取ることができます。それを病理検査に回すことで、悪性の診断をつけることができる。

そのため、悪性疾患の初回ERCPでは、日本ではENBDが好まれる傾向があります。ただし、ここは施設によって考え方が変わります。

EBSを選ぶ場合

EBSは胆汁を体内で循環させられるというのが基本ですが、それ以外の理由で選ぶこともあります。

たとえば急性胆管炎が重症化して、気管挿管が必要になった場合です。ENBDチューブが入っていると、次の内視鏡処置のときに邪魔になったり、挿管の操作のときに邪魔になったりすることがあります。さらにチューブが途中で折れてしまうと、気管挿管された状態でもう一度ERCPをしなければならなくなります。

こうした状況が想定される場合には、EBSを選択することがあります。

ENBDの介助で一番の山場はどこか。留置する、まさにその瞬間です。

ENBDが特に有用なのは、悪性胆管狭窄、なかでも肝門部や肝内胆管の狭窄がある場合です。ENBDを留置することで悪性の診断をつけられるという利点もあります。ただ、こういう症例はえてして、ガイドワイヤーで狭窄部を突破して留置すること自体がとても難しい。

そこでENBDを留置しようとしたときに、ガイドワイヤーを誤って抜いてしまったら、どうなるか。

ERCPの処置室が、場が凍りつきます。

これは私自身がやってしまって、上級医にこっぴどく怒られたことがあるので言えることです。

では介助者は何をすればいいのか。ENBDを入れるときのガイドワイヤーは、

✅ 動かさない
✅ 奥に入れすぎない
✅ 抜きすぎない
✅ 術者が挿入しやすい適度なテンションを保つ
✅ その場に留めておく

ガイドワイヤー(ENBD)も、インナーシース(EBS)も、介助者の手元は同じ 奥に入れすぎると、 狭窄部 乳頭 胆管末梢(細く鋭角) 胆管末梢を突き破る 胆管穿破、胆汁瘻、出血 狭窄部より手前に引くと、 狭窄部 乳頭 胆管末梢 狭窄部を突破し直し 処置室の空気が凍る瞬間 狭窄部の先で保つと、 狭窄部 乳頭 胆管末梢 先端がその場に留まる 術者が処置具を進めやすい 末梢を突き破らない。狭窄部より手前に引かない。介助者が守っているのは、この2つの境界です
図2 入れすぎても、引きすぎてもいけない。介助者はこの狭い幅の中に先端を留めている

これを全部同時にやる必要があります。言葉にすると簡単ですが、実際にやるととても難しい。だからこそここが最も重要なポイントであり、術者と介助者の息を合わせることが非常に大切な場面になります。

特に気をつけたいのが、狭窄を越えた先にワイヤーの先端があるときです。少し引いただけでも狭窄部より手前に戻ってしまうと、また一から突破し直しになります。逆に奥へ送りすぎると、胆管の末梢は細く鋭角になっていますから、そのまま突き破ってしまう。

介助者が先端を留めておける幅は、思っているよりずっと狭いのです。

EBSの留置で介助者の手元にあるのは、インナーシース、アウターシース、そしてガイドワイヤーです。

長さと径を決めるのは術者なので、そこは任せてもらって大丈夫です。介助者にとって重要なのは、ENBDのときと同じで、ガイドワイヤーを奥に入れすぎない、引きすぎない、その場で適度なテンションを保つということです。

そしてEBSには、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。

インナーシースはかなり硬く、先端が尖っています。胆管の奥のほうに進んでしまうと、胆管を突き破って胆汁瘻を起こすことがあります。最悪の場合は出血します。

ですから術者から「ここでこれ以上入れないように」と指示が出たら、そこから先のインナーシースは、ENBDを留置するときのガイドワイヤーと同じ扱いになります。適度なテンションを保ちながら、奥に入らないように、そして引きすぎないように。そのうえで術者がEBSを挿入しやすいようにしてあげる。ここがとても重要です。

先ほどの図2をもう一度見てみてください。持っているものがガイドワイヤーからインナーシースに変わるだけで、介助者の手元がやっていることは同じです。ENBDとEBSは目的も構造も違うチューブですが、留置の瞬間だけは同じことを求められます。

このテンションの感覚は、実際に経験を繰り返す中で身につけていくものです。ただ、実務でやる前に「こういうテンションをかけるものなんだ」ということは、頭にしっかり入れておかなければいけません。

EBSそのものの構造については、また別の記事で詳しく書きます。

内視鏡室を出たあとの話もしておきます。

ENBDの場合

ENBDチューブからは胆汁が毎日排出されますから、排液の量と性状を見ます。そして、その日その日のトレンドも見ておく必要があります。

急に多くなる分には、大半はあまり問題になりません。注意したいのは次の2つです。

色が赤くなってきた → 胆道出血の可能性
急に減ってきた → チューブが途中で折れている、または逸脱して十二指腸内に落ちてしまっている可能性

この場合は、主治医への報告が必須だと思います。

ただし、です。急に胆汁の量が減っても、ENBDチューブは適切な位置に留置されていて、折れてもいないという場合があります。

これは何が起きているかというと、胆汁がENBDチューブを通らずに、乳頭から直接十二指腸に出ているだけなんです。そういう場合は、減っていても問題ありません。

とはいえ、この判断は医師に必ず確認するようにしてください。

EBSの場合

EBSはトラブルがあると、肝障害が遷延したり、黄疸が出てきたりします。

両方に共通すること

チューブを留置した後、直後か、施設によって違うと思いますが翌日には、X線を撮ってチューブが適切な位置に入っているかを確認します。あわせて血液検査で治療の効果を判定していきます。ここはとても重要です。

病棟の看護師さんへ。チューブを入れた後にX線が撮られていない場合、普段は撮っている施設であれば、医師側のオーダー漏れかもしれません。ひとこと声をかけてもらえると、こちらとしては本当に助かります。

とはいえ、医師に指摘するのは気が引ける、という声もよく聞きます。どう伝えればいいかについては別記事に書いたので、よければあわせてどうぞ。

医療チームにおけるアサーティブ・コミュニケーション

今回はENBDとEBSの概要をお伝えしました。

2本のチューブの概念、どういう目的で使うのか、その違い、そして留置のときに介助者が押さえておくべきポイント。簡単にではありますが、病棟での管理についても触れました。

これらのチューブは症例によって使い分けますし、どういうときにどのタイプを使うかは施設によって変わります。ご自身の施設で確認するようにしてください。

細かいガイドワイヤーの操作や、EBSの詳しい構造については、また改めて別記事にしていきます。そちらもあわせてご覧いただけると嬉しいです。

この記事が皆さんの臨床、そしてERCPの介助力の向上に結びつけば、とても嬉しいです。

ではまた。

今回はENBDとEBSに絞ってお伝えしましたが、内視鏡の介助全般を体系的に学びたい方には、この一冊が役に立つと思います。器具や薬剤、前処置、観察まで網羅されていて、画像も豊富です。

dr-infoblog

30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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