よく看護師さんや薬剤師さんから、
「この用語ってどういう意味ですか?」とよく聞かれます。
正直、医者のカルテって略語を使うことが多いので、理解できないところが多々あると思います。
外来でカルテを覗き込んでくる患者さんがいるので、読まれないように、という理由もあるのですが、、
医師が割とよく使うけど、「なかなか調べても出てこない、「わかりにくい」用語についてまとめてみました。
この記事が少しでも皆さんの理解の助けになれば幸いです。
CT検査の用語 早見表【14個】
基本
| 用語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| CT | Computed Tomography | コンピューター断層撮影 |
| CECT | Contrast-Enhanced CT | 造影CT(造影剤を使う) |
| CTA | CT Angiography | CT血管撮影 |
| MDCT | Multi-Detector row CT | 多列検出器CT |
| MPR | Multi-Planar Reconstruction | 多断面再構成 |
ダイナミックCTの「相」
| 用語 | 英語 | 撮影のタイミング |
|---|---|---|
| 動脈相 | arterial phase | 造影剤が動脈に流入するタイミング |
| 膵実質相 | pancreatic parenchymal phase | 膵臓が最も濃く染まるタイミング |
| 門脈相 | portal venous phase | 門脈・肝実質が染まるタイミング |
| 平衡相(遅延相) | equilibrium / delayed phase | 造影剤が全身に行き渡るタイミング |
画像の読み方
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| CT値 | 組織のX線吸収の程度を数値化したもの |
| HU | CT値の単位(Hounsfield Unit) |
| 造影効果 | 造影剤により白く変化すること |
| 造影不良域 | 造影剤の染まりが悪い領域 |
| washout(ウォッシュアウト) | 一度染まった病変が、後の相で抜けること |
CECT(造影CT)と単純CTの違い
CECT(Contrast-Enhanced CT)は造影剤を使うCT、 単純CTは造影剤を使わないCTです。
カルテでは「CE-CT」「造影CT」「単純CT」「pCT (pはplaneの略)」などと書かれます。
| 単純CT | CECT(造影CT) | |
|---|---|---|
| 造影剤 | 使わない | ヨード造影剤を静注 |
| わかること | 形・出血・石灰化・結石 | 血流・腫瘍の性状・血管 |
| 所要時間 | 短い | やや長い |
| 副作用 | ほぼなし | アレルギー・腎機能への影響 |
| 準備 | 不要 | 問診・腎機能確認・ルート確保 |
なぜ造影剤を入れると診断できるのか
ポイントは「造影剤は血液に乗って運ばれる」ということです。
血流が豊富な組織には造影剤がたくさん届き、白く映る。 血流が乏しい組織には届かず、黒いまま。 この差(コントラスト)が病変を見つけやすくしてくれるということです。
つまり、造影CTで見ているのは形ではなく「血液の灌流量(流れる量のこと)」なのです。 ここが理解できると、以降の用語の理解がしやすくなると思います。
ダイナミックCTとは?
ダイナミックCTは、造影剤を注入したあと、同じ場所を時間差で複数回撮影する 方法です。
「ダイナミック(dynamic)」は「動的」という意味で、 造影剤が体の中を巡っていく“動き”を捉えることからこう呼ばれます。
1回だけ撮る造影CTでは、たまたま撮ったタイミングで見え方が変わってしまいます。 複数のタイミングで撮ることで、その病変がいつ染まって、いつ抜けるのかが分かる。 これが診断の決め手になります。
各相で何を見ているか
| 相 | タイミングの目安 | 主に見るもの |
|---|---|---|
| 動脈相 | 造影剤注入から30〜40秒 | 動脈・血流の豊富な腫瘍 |
| 膵実質相 | 40秒前後 | 膵臓(膵癌の検出) |
| 門脈相 | 60〜80秒 | 門脈・肝実質・肝転移 |
| 平衡相 | 3分前後 | washout・線維性成分 |
⚠️注意:秒数は施設のプロトコルによって異なります。ここで示しているのは一般的な例です。
CT値(HU)とは?
CT値は、組織がX線をどれくらい吸収するかを数値化したものです。 単位はHU(Hounsfield Unit:ハンスフィールドユニット)。
CTは白黒画像で、HUが高いほど白く、低いほど黒く映ります。 基準は水が0 HUです。
| 組織 | CT値の目安 |
|---|---|
| 空気 | 約 −1000 HU |
| 脂肪 | マイナスの値 |
| 水 | 0 HU |
| 軟部組織 | 数十 HU |
| 血液(新鮮な出血) | 軟部組織よりやや高い |
| 骨・石灰化 | 1000 HU超 |
「CT値が高い」=「白い」と覚えておけば、 カルテの記載はだいたい読み解けます。
造影効果とは?
造影効果とは、造影剤によって白く色が変化することです。
造影剤は血液によって運ばれるため、 「白く変化している=そこに血液が通っている」と判断できます。
そのため、以下のような場面で重要になります。
- 消化管出血:出血している場所に造影剤が漏れ出す
- 脳出血・動脈瘤:血管の異常を描出する
- 腫瘍の評価:血流が豊富な腫瘍は濃く染まる
カルテでは「造影効果あり」「濃染(のうせん)」などと書かれます。
造影不良域とは?
造影不良域とは、通常と比べて造影剤による染まりが悪い (=白く映りにくい)領域のことです。
理屈はこうです。
- 造影剤はCT画像で白く映る
- 臓器ごとに造影剤が入る程度に差がある(=コントラストがつく)
- 血の巡りが悪いと、造影剤が届きにくい
- 結果、染まりが悪い領域ができる
つまり「造影不良域=血流が悪い場所」。 虚血、壊死、乏血性腫瘍などを疑うサインになります。
washout(ウォッシュアウト)とは?
washoutは、動脈相で一度濃く染まった病変が、 その後の相で周囲より暗く抜けて見える現象です。
代表的なのが肝細胞癌で、 「動脈相で濃染し、門脈相〜平衡相でwashoutされる」という 時間的な変化のパターンが、診断上とても重要とされています。
単発の造影CTではこれが分かりません。 ダイナミックCTが必要とされる理由が、まさにここにあります。
消化器内科でCTをどう使っているか (私見)
膵臓を見るとき
膵癌は乏血性の腫瘍なので、周囲の膵実質が最も濃く染まる 膵実質相で、逆に黒く(低吸収に)浮かび上がります。 だから膵臓を評価するときは、必ずダイナミックCTを依頼します。
膵炎の時には膵臓の造影不良域をみます。その部位が広ければ広いほど、重症です。
肝臓を見るとき
肝細胞癌は動脈相で濃染しwashoutされる、 肝転移は門脈相で低吸収の結節として見える
→見たいものによって、注目する相が変わります。
内視鏡所見と突き合わせるとき
特に吐血や血便で救急受診された患者さんのCTを見るときには、出血部位を見つけます。
動脈相で胃や腸の中が白くなっていた場合、静脈相で白い部分が腸の中に広がっていれば、消化管出血の証明になります。
その場合、緊急内視鏡をやる必要がありますから、救急外来では最も重要な所見の一つです。
造影剤を使う前に確認していること
造影CTの前には、以下を確認しています。
- ヨード造影剤アレルギーの既往
- 腎機能(eGFR):造影剤腎症のリスク評価
- 喘息の既往
- 糖尿病薬(ビグアナイド系/メトホルミン)の内服
⚠️⚠️ メトホルミンの休薬について
ビグアナイド系薬剤の休薬期間の推奨は、添付文書の記載とガイドラインの推奨がずれている時期もありました。
国内外での取り扱いが異なっていたり、今後改訂される可能性がありますので、必ず最新の添付文書および 日本腎臓学会/日本医学放射線学会/日本糖尿病学会の合同ガイドラインを ご確認ください。
よくある質問
Q. CECTとは何の略ですか? Contrast-Enhanced CT(造影CT)の略です。カルテでは「CE-CT」とも書かれます。
Q. 単純CTと造影CTの違いは何ですか? 造影剤を使うかどうかです。単純CTは形・出血・結石を、 造影CTは血流や腫瘍の性状を見るのに適しています。
Q. CT値(HU)とは何ですか? 組織のX線吸収の程度を数値化したものです。水を0 HUとし、 値が高いほど白く映ります。
Q. ダイナミックCTと造影CTの違いは何ですか? ダイナミックCTは造影CTの一種で、同じ場所を時間差で複数回撮影するものです。 病変が「いつ染まっていつ抜けるか」を評価できます。
Q. 造影不良域とはどういう意味ですか? 造影剤の染まりが悪い領域のことで、血流が乏しいことを示唆します。
CT検査について知りたい方へ
消化器の用語・内視鏡についてもっと知りたい方へ
以下の記事で略語やおすすめ書籍を紹介しています。
なるべくわかりやすく、網羅的にまとめています。ご興味がありましたら、ぜひチェックしてみてくださいね。
さいごに
これらの用語は、医療現場で頻繁に使用されますが、忙しいのにわざわざ医者に聞きにくい、、詳細を理解することが難しい、ことも多いですよね。
もしもこの記事が明日からの業務の役に立てれば幸いです。
また、もしもこの記事をご覧になった方で、消化器関連の用語でわかりにくいものがあれば、解説記事を作っていこうと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました
おわり



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