「ロキソニン+ムコスタ」処方のエビデンスを胃潰瘍予防の観点から考える

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医療コラム

感冒や慢性疼痛の患者さんに対して、「ロキソニン+ムコスタ」(人によっては「ロキムコ」と呼びます)の処方、結構している人も多いと思います。他科の同期 (特に循環器内科、整形外科の医師)から、

整形外科の先生
整形外科の先生

ロキムコって、普通でしょ?!

とよく聞かれますが、実は消化器内科的にはあまりお勧めできません
いつもこの質問に答えるときに説明している、とある論文を参考にしながら、その理由をご紹介します。

【結論】

・ロキソニン+ムコスタ(ロキムコ)は、NSAIDs潰瘍の予防という点では
 消化器内科的におすすめできません
・根拠となる論文は、PPIが普及する前のもので、脱落率も高い
・「消化性潰瘍ガイドライン2020」でもレバミピドは推奨されていません
・NSAIDsを継続的に使うなら、PPI(またはP-CAB)を併用するのが基本です
・ただし、ロキソニンもムコスタも良い薬です。組み合わせの問題です

早見表:NSAIDs潰瘍予防の選択肢(保険適応に注意)

薬剤ガイドラインの位置づけ備考
PPI(オメプラゾール等)推奨保険適応は再発例のみ。初発例にはなし
P-CAB(ボノプラザン/タケキャブ)推奨同上
COX-2阻害薬+PPI出血性潰瘍の既往がある場合に推奨
ミソプロストール(サイトテック)保険適応あり下痢などで継続が難しいことも
レバミピド(ムコスタ)推奨されていない良い薬だが、この目的には不向き

ムコスタはレバミピドという薬剤の商品名です。発売元は大塚製薬。

胃酸から胃自体を守る、「防御因子」または「盾」のような作用を強くすることを目的に開発されました。

Mucosal Stabilizer(粘膜の安定化因子)
Gastric Mucosal Prostaglandin Inducer (胃粘膜プロスタグランジン産生を誘導する薬剤)

といった名前の由来があるようです。今度大塚製薬の人が病院に来たら聞いてみようと思います。

つづいて、ロキムコ処方のエビデンスとなる論文をご紹介します。

Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition誌に2007年に掲載された、

“Comparison of Prevention of NSAID-Induced Gastrointestinal Complications by Rebamipide and Misoprostol: A Randomized, Multicenter, Controlled Trial-STORM STUDY “

からです。

NSAIDsによる胃十二指腸潰瘍などの消化管合併症の予防効果について、

レバミピド(ムコスタ) vs ミソプロストール(サイトテック)を直接比較した臨床試験です。

レバミピドとサイトテックは多少作用機序に違いはあるものの、いずれもプロスタグランジンの産生を刺激することで、胃の粘液(防御因子)分泌を促進するという点が類似してます。

試験結果概要

NSAIDsの投与開始時からレバミピド併用群、ミソプロストール併用群とに患者を分け、12週時点での胃潰瘍や胃粘膜障害、消化管出血の発生率について調査されています。

調査開始時と、12週経過時点で胃カメラによる評価が行われました。

胃潰瘍の発生率

レバミピド群 7/176人(3.9%) vs ミソプロストール群 7/156人(4.4%)

消化性潰瘍の高リスク群(ピロリ菌感染など)での胃潰瘍などの発生率は

レバミピド 6/151人(4.0%) vs ミソプロストール 6/154 (3.9%)

であり、レバミピドがNSAIDs潰瘍の予防に有用であったと結論づけています。

なお、ミソプロストール(サイトテック®️)はNSAIDsの長期投与時の胃・十二指腸潰瘍の予防として保険適応があります。

この論文が発表された当時、今では広く使われている薬である、

「PPI(プロトンポンプ阻害薬)が使用される前の段階だった」

ということにまず注意が必要です。

胃潰瘍の予防に有効な薬が存在しない時代に、
「ムコスタの有効性を示したことで、胃潰瘍の予防に対する手段を増やすことができた」
という点では非常に評価されるべきだとは思います。

しかし、今回の論文には重大な問題点がありました。

ディスカッションでも触れられていますが、

「ドロップアウト率が高すぎる」という点がこの論文の問題点です。

ムコスタ、サイトテックはそれぞれ最初207人と203人が対象となりましたが、そのうち

ムコスタ群は15%
サイトテック群は24%

の患者さんが試験から離脱してしまい、解析対象から外れています。通常の試験ではなかなか考えにくいくらい多いです。

理由としては、内服順守率が低い胃酸関連の症状が出現した患者からの要望胃十二指腸潰瘍があったため同意の取り下げがあった、などなど。

こういった理由のドロップアウトが多いとなると、結果の再現性、妥当性の面から、本当に有効だと結論づけていいのか、疑問が残ってしまいます。

また、そもそもですが、日本の潰瘍予防のガイドラインではムコスタは推奨されていません。

日本消化器病学会から出ている「消化性潰瘍ガイドライン2020」によれば、

まず、NSAIDs内服により、胃潰瘍や出血性胃潰瘍のリスクは約19倍

ピロリ菌感染+NSAIDsがあると、なんと約61倍にまで 上昇するとされています。

胃潰瘍やピロリ菌の感染がある方はPPI(ボノプラザン、タケキャブ)が推奨され、出血性潰瘍の既往歴がある場合にはCOX-2阻害薬(セレコキシブなど)とPPIの併用が推奨されています。

ガイドライン上では胃潰瘍の既往歴のない患者さんも、NSAIDs潰瘍の予防治療としてPPIが推奨されていますが、保険適応とは異なる記述である点に注意が必要です。

いずれも複数のRCTやメタアナリシスで導き出された結果であり、私たち消化器内科医の「臨床感覚」と一致する形です。

注意点として、NSAIDs潰瘍の予防治療として、PPIの保険適応があるのは、再発例であり、初発例にはありません
しかし、PPIを処方しないと患者さんへ不利益となるため、保険病名はきちんとつけて処方しておかないといけません。

では、いつPPIは処方すればいいのか?

週に1回程度内服する場合や、月に1-2日のみ内服する健康な人など、データのない対象患者さんがいることも事実です。

結論から言うと、NSAIDsを長期的に、継続的に使う患者さんにはPPI(またはP-CAB)を併用します。

NSAIDsの短期処方ならどうするか?

感覚としてですが、基本的に3-5日以上連続して1日2-3回ほどNSAIDsを内服する(可能性のある)患者さんに対しては、PPIは必ず出すようにしています。

逆に、それ以下であればあまり処方していません。

高リスク患者(ピロリ菌感染、潰瘍既往、抗血栓薬併用など)ではどうするか

この場合には、短期間であっても基本的には処方します。

あまり知られていませんが、こうした高リスク群であるにも関わらず、適切に予防されずにNSAIDsによる胃潰瘍の出血で搬送される患者さん、よくいらっしゃいるんですよね、、、、、

よくある質問

Q. ロキソニンとムコスタの併用は意味ないのですか?
 → NSAIDs潰瘍の予防という目的では、推奨されていません。
  ただし薬そのものが悪いわけではなく、組み合わせの問題です。

Q. なぜロキムコ処方が広く行われているのですか?
 → PPIが普及する前の時代には、有効な選択肢のひとつだったためです。
  当時の処方習慣が残っている面があると考えています。

Q. ではロキソニンには何を併用すればいいですか?
 → PPI(またはP-CAB)です。ガイドラインでも推奨されています。
  ただし保険適応は再発例のみなので、病名の付け方に注意が必要です。

Q. ロキソニン単剤ではダメなのですか?
 → NSAIDs内服により胃潰瘍のリスクは約19倍、
  ピロリ菌感染があると約61倍に上昇するとされています。

Q. ムコスタはどんなときに使うのですか?
 →下部消化管出血の予防に効くかもしれない、という内容をこちらの記事でまとめています。よろしければ、ご覧ください。
  ロキソニン関連の論文【下部消化管出血の予防編】

Q. 保険病名はどうすればいいですか?
 → 胃潰瘍や逆流性食道炎治療薬として処方するのが一般的ですが、処方が可能かどうかは主治医へ相談してください。

こちらの書籍の中にも、ロキムコ処方について言及があります。

特に病棟や外来で頻出する薬剤の処方に関して非常によくまとまっており、私は初版の頃から愛用しているものです。研修医の時に病棟薬剤の使い分けを勉強するために購入しました。

そして今回の論文は、研修医時代にこの書籍に出会って何度も読んだものです。研修医だけでなく、働き始めの薬剤師さん、看護師さんにも必ず役立つ1冊です。持っていて絶対に損はしません。ぜひお手に取ってみてください。

ロキソニン+ムコスタ処方は、上記の理由から消化器内科医としてはお勧めしません。

ただ、今まで長年処方されていることから、ロキソニンもムコスタも、いずれもいい薬であることは間違いありません

ただ、その組み合わせ処方をする患者さんはよく選ばなければいけない、ということでした。ロキソニン関連の論文は他の記事でも取り上げています。もしよろしければ、ご覧くださいね。

おわり

dr-infoblog

30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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