外来の英語|患者さんの呼び込みから診察室の第一声まで

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医療英語

看護師さんから「腹痛の患者さんです」と内線が入りました。 問診票を見ると、症状の欄に Abdominal pain とだけ書いてあります。

……あ、英語だ。

こういうとき、頭が真っ白になるんですよね。私も最初のころは、待合まで歩く十数秒の間に「何て呼べばいいんだっけ」「まず何を聞くんだっけ」と焦っていました。

この患者さん、Mr. Smith(仮名)は、最終的に総胆管結石による急性胆管炎と診断されて、その日のうちに緊急ERCPになりました。このシリーズでは、この一連の流れの中で私が実際に使った英語を、順番にご紹介していこうと思います。

第1回は、待合から呼び込んで、診察室の椅子に座ってもらうまで。 たった1〜2分の場面ですが、ここでつまずくと後の問診がずっとやりにくくなります。


場面1|待合室から呼び込む

基本の呼び込み

スミスさん、3番診察室へお入りください。

Mr. Smith, please come to consultation room three.

少し柔らかくしたいときは、

Could Mr. Smith please come to consultation room three?

診察室の番号は “room three” のように基数で読むのが一般的です。私は最初、日本語の「3番診察室」に引っ張られて “the third room” と。通じるとは思いますが、聞き慣れないのだと思います。

名前の読み方が分からないとき

これ、地味に困りますよね。Smith のような名前ならいいのですが、そうでないことも多い。

無理に読んで違っていると気まずいので、私は素直に聞くようにしています。

Excuse me, may I ask how to pronounce your name?

I’m sorry, I want to make sure I say your name correctly.
Could you say it for me? (Could you say that again? もよく使います。)

聞かれて嫌な顔をされたことは、今のところ一度もありません。むしろ「ちゃんと呼ぼうとしてくれている」と受け取ってもらえている気がします。

🔍 敬称の使い分け

  • Mr. 男性
  • Ms. 女性(未婚・既婚を問わない。迷ったらこれが安全)
  • Mrs. 既婚女性(相手が名乗った場合以外は、こちらから使わないほうが無難)
  • Mx.(ミクス)性別を明示しない敬称。近年使われるようになってきているようです

最近はファーストネームで呼ぶ施設も増えているとのことですが、初対面ではまず敬称+姓のほうが失礼がないと思います。


場面2|診察室に入ってもらう

入室と着席

どうぞお入りください。

Hello, please come in.

Come on in.(こちらのほうがくだけた印象)

どうぞおかけください。

Please have a seat.

椅子を手で示しながら Please have a seat right here. と言うと、より親切な感じになります。

一方で Sit down. は避けたほうがいいです。文法的には正しいのですが、「座りなさい」と子どもに言うような響きになってしまうそうです。同じ理由で Stand up. も直接的なので、診察で立ってもらうときは依頼形にしています。

Could you stand up for me?

💭 “for me” って偉そうじゃないの?

私も最初は「先生のためになぜ患者さんが?」と引っかかりました。でも英語の “for me” は文字通りの意味ではなく、依頼を柔らかくする添え言葉として使われているようです。日本語でいう「〜してくれる?」「〜お願いね」のような、協力を促す語尾に近い。

日本人はつい please をつけて丁寧にしようとしますが、”Sit down, please.” だと「先生が生徒に指示する」響きが残ってしまう。”for me” のほうが「一緒に進めましょう」というニュアンスが出て、距離が縮まる印象がありました。

この感覚については[内視鏡室での声かけの記事]でもう少し詳しく書いています。


場面3|本人確認と通訳の確認

ここ、フレーズ集にはあまり載っていないのですが、実際には自己紹介より先にやるべきだと思っています。

本人確認

Could you tell me your full name and date of birth?

日本語の外来でも同じことをしていますよね。英語だからといって省略する理由はありません。むしろ、後で検査や処置に進むことを考えると、ここは丁寧に。

通訳が必要かを確認する

これが一番大事です。

Are you comfortable speaking in English, or would you prefer an interpreter?

We can arrange an interpreter if you’d like.

私たちはつい「英語で頑張らなきゃ」と思ってしまいますが、そもそも患者さんの母語が英語とは限らないんですよね。英語も日本語も第二言語という方は珍しくありません。

そして、こちらの英語力が足りないまま押し切るのは、患者さんにとって不利益になります。医療通訳や電話通訳のサービスがある施設なら、迷わず使ったほうがいいと思います。

(私の病院には通訳さんはいませんから、大変です💦)


場面4|自己紹介と主訴

名乗る

Hi, I’m Dr. Tanaka. Nice to meet you.

役割まで添えると、患者さんも安心しやすいようです。

I’m Dr. Tanaka, the gastroenterologist who will be seeing you today.

🔍 “will be seeing” のニュアンス

単純未来の “will see” は「診ます」と事実を述べる感じで、少し事務的。進行形未来の “will be seeing” にすると「これから担当することになります」と、自分の役割を紹介する響きになる気がします。

最初の挨拶では、アイコンタクトと笑顔。握手は、感染対策上控える方も多いので、相手の様子を見てからにしています。

主訴を尋ねる

いよいよ本題です。最も自然で頻用されるのは、

What brings you in today?

私は What brings you here today? をよく使います。特に理由はなくて、こちらのほうが口に馴染んだ、というだけです。

他にも、

How can I help you today? What seems to be the problem?

避けたいのは What’s wrong with you? です。直訳すると「どうしましたか」ですが、「あなたのどこがおかしいの?」と責めるような響きになってしまいます。


まとめ|今日のキーフレーズ

場面フレーズ
呼び込みCould Mr. Smith please come to consultation room three?
名前の確認May I ask how to pronounce your name?
入室・着席Please come in. / Please have a seat.
本人確認Could you tell me your full name and date of birth?
通訳の確認Would you prefer an interpreter?
自己紹介I’m Dr. Tanaka, the gastroenterologist who will be seeing you today.
主訴What brings you in today?

私がやっている練習法

こういうフレーズは、読んだだけでは絶対に出てきません。私も何度も、頭では分かっているのに口から出てこないという経験をしました。

なので、待合まで歩く間に一回、小声で言ってみるようにしています。「What brings you in today…」と。廊下で独り言を言っている変な医者ですが、これをやるかやらないかで、最初の一言の滑らかさが全然違います。

通勤中に脳内で診察をひととおりシミュレーションしておくのもおすすめです。

みなさんはどうされていますか。もっといい言い回しや、「ここは違う」という点があれば、ぜひコメントで教えてください。一緒に勉強させていただけたら嬉しいです。


次回は、”What brings you in today?” の答えを受けて、OPQRSTで現病歴を聴取する場面です。Mr. Smith の痛みが、どんな言葉で語られたのかも含めてご紹介します。

dr-infoblog

30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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