胃カメラ、大腸カメラ、ERCPなどの時に使用する薬剤を一覧でまとめてみました。
あくまでこの記事は筆者個人のメモに基づいて作成されたものであり、薬剤の使用に関しては必ずご自身で最新の添付文書やガイドライン等を確認してください。
鎮静薬
ジアゼパム(ホリゾン、セルシン)
1回あたり使用量:5-10mg(0.5-1A)が一般的(原液のまま使用)
半減期:35時間前後と比較的長い
個人的な使用感:
呼吸抑制、循環抑制が起きにくい印象だが、油断はできない.。脱抑制は少ないかも。(痙攣発作の際にも使用する薬剤のため)
禁忌:急性閉塞隅緑内障、重症筋無力症、リトナビル・ニルマトレルビル(抗HIV薬)内服中
ミダゾラム, ドルミカム
特徴:血管痛すくない、即効性あり、舌根沈下に注意(血管が赤くなるフレア現象も稀にある)
作用時間:2-6時間
半減期:17時間前後
使用量:0.02-0.2mg/kg (1.0-5.0mgが一般的)
注意:投与直後の舌根沈下によるSat低下や急変の報告あり
溶解・使用方法例:ミダゾラム1A(10mg) + 生理食塩水8ml = 1mlあたり1mg
個人的な使用感:投与直後、多弁になる人も多い。寝る前にはあくびをしたり、指が早く動く。
禁忌:急性閉塞隅緑内障、重症筋無力症、 HIVプロテアーゼ阻害薬内服中、ショック・昏睡患者、急性アルコール中毒
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)
特徴:ジアゼパムの10倍の効果、循環抑制なし(と言われている)
半減期:約7時間
1回使用量:0.004-0.03mg/kgを静注
→50kgの患者さんなら、0.2mg-1.5mgほど。
溶解・使用法例:サイレース(1ml/1A) + 生理食塩水9mL→1mlあたり0.2mg
禁忌:急性閉塞隅角緑内障、重症筋無力症
デクスメデトミジン(プレセデックス)
作用機序:α2アドレナリン受容体拮抗薬、血圧下がりやすい
特徴:10分間のボーラス投与必要
適応:局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静→内視鏡を使ったほぼ全ての処置・手術において使用可能
注意:ジギタリス、βブロッカーと併用で徐脈
使いどころ:アルコール性慢性膵炎など、鎮静薬が効きにくい人には有効
欠点: ボーラス投与が必要なため、処置の件数が多い時には時間が大きくロスする。(とはいっても、患者さんが楽に受けられるなら絶対に使ったほうがいい)
拮抗薬:フルマゼニル
目的:早く目が覚めるようにするため
1回量:0.2-0.5mg, Max1mgまで可
半減期:60分弱
注意:半減期はフルマゼニルの方が短い
→一回覚醒しても, その後再鎮静がかかる可能性がある
鎮痛薬
塩酸ペチジン(医療用麻薬)
作用機序:モルヒネと同様
強さ:モルヒネの1/5〜同じくらい
使用量:35-50mg(35mg/1A)
禁忌:重篤な呼吸抑制、肝機能障害のある患者、慢性肺疾患による心不全患者、痙攣状態、急性アルコール中毒、モノアミン参加酵素阻害剤を使用中、ナルメフェン投与中
拮抗薬はナロキソン塩酸塩
→1回使用量は0.2mg(1A)。
離脱症状や疼痛増悪の可能性があるので、医療用麻薬を使用している患者さんには投与しない!
ペンタゾシン(ソセゴン)
弱いオピオイド(モルヒネなど)拮抗作用があります。
モルヒネなどを投与されている患者さんに投与すると、かえって苦痛が強くなりますので注意!
強さ:モルヒネの1/2〜1/4程度
1回使用量:10-30mgを使用
禁忌:頭蓋内圧上昇、ナロキソンアレルギーのある人
拮抗薬:なし
鎮痙薬 (腸の動きを一時的に弱める)
① ブチルスコポラミン(ブスコパン)
1回使用量:10-20mg(1/2〜1A)を使用 (原液のまま)
作用機序:抗コリン作用→腸の動きを弱める
禁忌:閉塞隅緑内障, 出血性大腸炎, 排尿症状のある前立腺肥大, 重篤な心疾患, 麻痺性イレウス, アレルギー歴あり
② グルカゴン
血糖値上昇作用のあるホルモン
作用機序;平滑筋弛緩作用, 胃液・膵液分泌抑制→腸の動きが弱まる
1回の検査であたり10-30mgを使用
使用感:大腸カメラの時に使用しますが、効果は5-10分程度で切れる。切れたあとにはむしろ腸の動きが強くなって検査がやりにくくなる。
禁忌:褐色細胞腫, パラガングリオーマ, アレルギーのある人
内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインも
さいごに、日本消化器内視鏡学会が2020年に「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」を発刊しています。
webで誰でも見れるようになっていますので、ぜひご自身でも確認してみてください。
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