当直手当が安い理由は「市場」だった。勤務医の当直の相場を調べてみた

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医師の方であれば、当直のあともそのまま日中の仕事をする、というのはある程度当たり前のことかもしれません。

私自身が医師バイトの求人サイトに登録したことで、自分の労働価値を見つめ直すきっかけになりました。この記事では、同じような悩みを持つ先生方の参考になれば嬉しいです。

当直明けに30時間働く、という日常

2024年に働き方改革が実施され、今までグレーゾーンだった当直明けの扱いも決まりました。
宿日直許可を受けている病院であれば、当直明けにそのまま通常勤務をしてよいとされています。

前提は「宿日直は待機時間がメイン」であること。連続した労働があれば、それは夜勤です。

簡単にいうと、合法的に当直明けもほぼ通常通りの仕事をしてよい、とされたわけです。(厳密にいうと、詳細は施設により異なります)

当直の実情

制度が変わり、労働負担が軽くなると思いきや、実際はどうでしょうか。

1〜2時間ごとに電話で起こされ、救急外来での対応を依頼され、病棟の転倒対応をして……。あまり寝られない当直も比較的多いです。そして翌日もいつも通りに仕事が始まり、結局は30時間以上も連続して拘束されます

結局何も変わりませんでした

当直あけに関する調査

これは私だけの話ではないようです。
2017年に医師1,649人を対象に行われた調査では、当直後も82.5%が通常勤務をしており、8割以上の勤務医が「通常勤務―当直―通常勤務」という32時間以上の連続勤務を続けているという結果でした。
周りの病院や大学に勤務している同期と話していても、診療科により異なるものの、同じような意見が多数でした。
*この調査は働き方改革以前のものであることに注意が必要です。

当直開けの私たちの能力

当直明けというのは、飲酒後のようにぼうっとする判断力が確実に落ちている状態です。
同じ調査では、当直している医師の半数以上(52.5%)が当直明けのヒヤリ・ハットを経験しており、最も多かったのは処方・投薬・オーダーミスでした。

それでも外来では、患者さんをいつものように診療し、治療もいつも通りにこなすことが求められます。

出典:医師転職研究所「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」(株式会社メディウェル)

外勤当直の相場がいくらなのかは、求人サイトを見れば分かります。
この記事では、実際に求人サイトに登録して確かめた話を書いていきます。

外勤当直に行って気づいたこと

私は研修医を終えて医局に所属しました。そこでは明けで働くのが普通だと思っていたので、「仕方ないから」と何も考えずに働いてきました。

転機は外勤当直でした。いつもの病院と同じように呼ばれ、あまり寝られないまま朝を迎えました。忙しさは変わりません。

違ったのは金額でした。

常勤医として当直をどれだけ頑張っても、手当はせいぜい数千円から1万円程度。ところが外勤の当直では、同じ一晩でその何倍もの金額が出ていたのです。

同じ夜を、同じように働いて、なぜこれほど違うのか。この事実を知ってから、私自身の医師としての価値はどのくらいなのか、疑問を持つようになりました。

なぜ院内と外勤でこれほど違うのか?

そこで、外勤当直やバイトの市場について調べてみました。

前提として、常勤医にはボーナスや有給、住宅手当などがつきますが、非常勤(バイト医)にはつきません。ですから当直手当だけを並べて比べるのは、厳密には公平ではないという考え方も成り立ちます。

そのうえで、差がつく理由は「市場を挟んでいるかどうか」だと私は考えています。

「当直」手当の決まり方の違い

院内の当直

病院

▼ 常勤医で回す

常勤医(自分)

院内の規定で決まる数千円〜1万円

外勤の当直

病院

▼ 外部に募集

医師の労働市場

▼ 医師が選ぶ

来てくれる医師

相場で決まる数万円〜十万円

違いは制度ではなく、
市場を通っているかどうか

当直やバイトには相場があります。おおむね日勤なら時給換算1万円以上、当直なら1回の勤務で数万円から十万円程度と、幅があります。

外勤の当直は、病院が外部から医師を募集する仕事です。募集しなければ、その夜に医師がいません。相場から大きく離れた条件では医師は集まらず、よりよい条件のところへ流れていくだけですから、金額は最終的に市場で決まります。

一方、院内の当直は常勤医でやりくりします。新たに募集する必要がないので、病院側に手当を上げる直接の理由がありません。

これらから制度が違うのではなく、市場を通っているかどうかが違う、ということに気づきました。(当たり前かもしれませんが、、、)

自分の値段を知るために登録してみた

常勤医として勤務する中で、今まで考えてこなかったことがあります。自分の労働にどのくらいの価値があるのか、という点です。

私の場合、外勤先は医局が決めてそこへ行くというシステムでした。そのため、外部の労働市場の相場というものをほとんど知りませんでした。(ただのアホなのかもしれません💦)

話は変わりますが、住宅を探すときはSUUMOのような検索サイトを使いますよね。
買うと決めていなくても、相場を知るために眺めることがあります。自分の労働市場の相場を知るのも同じで、まずは求人サイトに登録するところから始まります。

相場は「見る場所」がわかれば知ることができる

住まい探し

SUUMOなどの
検索サイト

▼ 眺めるだけ

買わなくても相場が分かる

自分の労働

医師向けの
求人サイト

▼ 眺めるだけ

転職しなくても相場が分かる

当直帯のアルバイト日数(月あたり)

58.9% 41.1%

■ していない(0日) □ している

出典:医師転職研究所(メディウェル、2024年10月/医師1,596名)

ちなみに、当直帯のアルバイトを「していない(0日)」と答えた医師は58.9%で、最も多い回答でした。日勤のバイトはしていても、当直のバイトは未経験またはルーティンではやっていないという医師のほうが多数派なのです。

実際にサイトに登録をしてみた

私自身、医師バイトドットコムに登録してみました。登録は無料です。

登録後に担当者から本人確認の連絡がありました。「情報収集だけです」と伝えたところ、その後しつこく案件を勧められることはなく、あとは情報を登録してメールを適宜チェックするだけで求人を確認できています。

求人票で私が見ているのは、次の3点です。

  • 当直1回あたりの金額:同じ地域でも病院によって差が意外とある
  • 明けに勤務があるのか、帰れるのか
  • 救急外来の対応があるのかどうか:いわゆる寝当直なのか、そうでないのか

同じ「当直」という言葉でも、中身はかなり違います。金額だけを見て決めると、想像していたものと全く違うことになりかねません。

こうして求人を見ていくうちに、「他にも働き方がある」と思えたことで、なんだか気が楽になったように思います。

医師は時間の切り売りでのみ成り立つ職業ですが、体は一つで、体力も時間も有限です。大事なリソースを必要な仕事に割けるよう、セーブしておくのも大事だと思います。

私は結局、転職はまだしていません。それでも、相場を知るだけで見える世界は変わったと思います。転職するかどうかは、今後の生活状況などを勘案して、決めればいい話ですからね。

よくある質問

医師のバイトは楽に稼げるのですか?

高額な当直案件はあります。ただし、救急を受け入れ、夜通し搬送の判断をする仕事であることも多いです。急変や看取りが何件あっても報酬が変わらない場合もあります。「楽に稼げる」とは言い切れません。だからこそ、金額だけでなく業務内容を確認することが大事だと思います。

求人サイトに登録すると、転職しなければなりませんか?

いいえ。登録は情報収集のためにもできます。私自身、登録しましたが転職はしていません。

登録すると電話は来ますか?

私の場合は、登録後に担当者から本人確認の連絡がありました。「今は情報収集だけです」と伝えれば、そのまま情報収集を続けられました。

登録したことが職場に伝わりませんか?

私が使った限りでは、そういったことはありませんでした。気になる場合は、登録時に担当者へ希望を伝えておくとよいと思います。

スポット勤務(単発)だけでも登録できますか?

できます。医師のアルバイトには、毎週決まった曜日に勤務する「定期非常勤」と、単発で勤務する「スポット」の2種類があります。どちらを希望するか登録時に伝えておくと、やり取りがスムーズです。

当直明けにそのまま外来をするのは違法ですか?

宿日直許可を受けている当直であれば、制度上は認められています。ただし、勤務先が取得している許可の区分(A・B・C水準)によって連続勤務時間の扱いが異なりますので、詳細は必ず所属施設にご確認ください。制度面については、別の記事で詳しくまとめる予定です。

自分の当直手当が安すぎるかどうか、どう判断すればよいですか?

宿日直許可の基準では、同様の当直に入る人の「1人1日あたりの平均賃金額の3分の1以上」が手当の目安とされています。年収を年間の勤務日数で割り、その3分の1を出すと、おおよその見当がつきます。厳密な計算とは異なりますが、まず自分の当直が時給いくらなのかを知ることが出発点だと思います。

外勤の相場と比べてみると、自分の当直がどのくらいの位置にあるのかが見えてきます。

dr-infoblog

30代の消化器内科医・内視鏡専門医。普段は某病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と子供2人の4人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、私立大学医学部を奨学金利用し卒業。20年間のauユーザー、趣味は旅行と最近はブログ。海外へ行きたい。そんな医師の日常を記事にします。不定期更新。

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