結論:大腸カメラの略語は「CS」が正解です
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の略語として国際的に標準なのは CS(Colonoscopy) です。日本消化器内視鏡学会の用語集にもCSと記載されています。
一方、日本の医療現場では CF も広く使われており、 会話では「下部」や「大腸カメラ」と呼ぶことがほとんど、という現実もあります。
この記事では消化器内視鏡専門医として、
- CSとCFの違い
- 胃カメラの略語(EGD・GF)との対応関係
- カルテでの実際の書き方
- 病院内でしか通じない言い回し
まで解説します。
大腸カメラの略語 早見表
| 略語 | 読み方 | 正式名称 | 意味 | 国際標準 |
|---|---|---|---|---|
| CS | シー・エス | Colonoscopy | 大腸内視鏡検査 | ◎ |
| TCS | ティー・シー・エス | Total Colonoscopy | 全大腸内視鏡検査(盲腸まで) | ○ |
| CF | シー・エフ | Colonofiberscopy | 大腸ファイバースコープ | △ |
| CSF | シー・エス・エフ | Colonoscopy Fiberscope(諸説あり) | CFと同義。大腸ファイバースコープ | △ |
| SCS | ― | Screening Colonoscopy | スクリーニング目的の大腸カメラ | ○ |
| 下部 | かぶ | ―(日本語) | 下部消化管内視鏡 | ― |
みたことがある略語は上記ですが、SCSは連携病院へ研修した際に見たもので、それ以降使ってる人を見たことはありません。
また、CSFも見たことありますが、のはや脳脊髄液と同じ略語なので、使わない方がいいようにも思います。
CS(Colonoscopy)とは?:国際標準の略語
CSは「Colonoscopy」の略で、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を指します。
- colono- = 大腸(結腸)
- -scopy = 内視鏡で観察すること
日本消化器内視鏡学会の「消化器内視鏡用語集」にも Colonoscopy(CS)として 記載されています。
論文では「略さず書く」のが原則
意外と知られていない点です。
Gastrointestinal Endoscopy(Vol.94, No.6, 2021)の略語一覧を確認すると、 胃カメラの「EGD」のような正式な略語は見当たりません。その代わり、 screening colonoscopy については “Write in full”(略さず全て書く) と 指示されています。
つまり英語論文では、CSと略さず colonoscopy と書くのが正しいということです。
一方、日々のカルテで毎回 colonoscopy と打ち込むのは現実的ではありません。 shift + cs を打つだけで済むため使いやすいですよね。
論文は略さない、カルテはCS。 これが結論です。
CF(Colonofiberscopy)とは?
CFは「Colonofiberscopy(大腸ファイバースコープ)」の略で、 CSと同じ大腸カメラを指します。
CFの由来
胃カメラのGF・GIFと同じく、光ファイバーを束ねて像を伝える 「ファイバースコープ」時代の呼び名がそのまま残ったものです。
1960〜70年代、大腸内視鏡はファイバースコープとして実用化されました。 この時代の名前が、今も現場で生き続けています。(著者調べ)
今の内視鏡はファイバースコープではない
現在の大腸内視鏡は、先端にCCDやCMOSといった撮像素子を内蔵した **電子スコープ(ビデオスコープ)**です。光ファイバーで像を運んではいません。
つまり CFの「F(Fiberscope)」は、すでに実態と合っていません。 名前だけが技術の世代交代に取り残された形です。
それでもCFは間違いではない
とはいえ、CFを使うのが誤りというわけではありません。 特にベテランの先生や看護師さんには、CFの方が通りが良い場面も多くあります。
大事なのは「正しさ」より「相手に伝わるかどうか」だと私は思っています。
CFはカルテでこう使われる
CF 施行、盲腸まで到達(〜分)
CF:S状結腸に0-Ⅰp病変(ポリープのこと)2個、EMR施行
CF f/u 3年後
CSとCFの違い
指す検査は同じです。 違いは名前の付け方だけです。
| CS | CF | |
|---|---|---|
| 正式名称 | Colonoscopy | Colonofiberscopy |
| 由来 | 検査そのもの | 使用する機器(ファイバースコープ) |
| 国際標準 | ◎ | × |
| 学会用語集 | 記載あり | ― |
| 論文 | 使える(略さず colonoscopy) | 使えない |
| 海外 | 通じる | 通じない |
| 日本の院内 | よく使う | よく使う |
迷ったらCSです。国際標準であり、学会用語集にも記載があり、 院内でも問題なく通じます。
CSとTCSの違い
TCSは「盲腸まで到達した」大腸内視鏡検査を指します。
ここは臨床的に重要な区別です。
大腸カメラは、癒着や高度屈曲、腸管の状態によって 盲腸まで到達できないことがあります。途中までしか観察できなかった場合、 その先に病変が隠れている可能性が残ります。
- TCS … 盲腸(回盲部)まで到達し、大腸全体を観察できた
- CS(到達範囲の記載なし)… どこまで見たのかが分からない
紹介状や退院サマリーで「CS施行、異常なし」とだけ書かれていると、 受け取った側は大腸全体を見たのか判断できません。
そのため、内視鏡所見を書く際に到達範囲は基本的にわかるように記載しています。
また、その部位まで要した時間も記載するのが一般的。
TCS:盲腸まで到達、異常所見なし
CS:S状結腸で高度屈曲のため挿入困難、以深は未観察
所見:回腸末端異常所見なし(これがTCSとほぼ同義)
GFとCFの違い(上部と下部の対応)
「GFとCFはどう違うの?」という質問をよく受けます。 上部(胃カメラ)と下部(大腸カメラ)は、略語が以下のように対応しています。
| 上部(胃カメラ) | 下部(大腸カメラ) | |
|---|---|---|
| 国際標準 | EGD | CS |
| 英国式 | OGD | CS |
| ファイバー由来 | GF / GIF | CF |
| 院内の口語 | 上部 | 下部 |
| 両方やる場合 | EGD/CS、「下部後上部」 | ← |
GFとCFの関係は、EGDとCSの関係と同じと覚えておけば混乱しません。
「下部内視鏡検査」という言い方
カルテやオーダー画面では、「下部消化管内視鏡検査」「下部内視鏡検査」と 正式名称で書かれていることもあります。
- 上部消化管内視鏡検査 = 胃カメラ
- 下部消化管内視鏡検査 = 大腸カメラ
略語ではありませんが、こちらの方が誤解がなく、 患者さんへの説明文書などでは正式名称が使われるのが一般的です。
読み方と、実際に使っている人
| 略語 | 読み方 |
|---|---|
| CS | シー・エス |
| CF | シー・エフ |
| TCS | ティー・シー・エス |
略語は使う人により異なる
胃カメラの記事でも書きましたが、誰がどの略語を使うかには傾向があります。
私たち消化器内科医は、日常会話ではほとんど「下部」と言います。 「明日の下部、何件?」「下部で大腸がんが見つかって」といった感じです。CSもCFも、口に出すことはあまりありません。
他の科の先生は大腸カメラと言うことが多く、内視鏡室の看護師さんは私たちに合わせて「下部」といったり、「CS」と言う人もいたり、さまざまです。
病院内での実際の言い回し
ここからは、カルテには書かないけれど現場では毎日飛び交っている表現です。 教科書にも用語集にも載っていません。
「下部」「大腸」
会話ではCS・CFよりも、こちらの方が圧倒的に多いです。
「この患者さん、下部でがんが見つかって……」 → 大腸カメラをやったら大腸がんが見つかって
「大腸みといて!」 → 大腸カメラで病気がないか確認しておいて
「下部後上部」
これも現場では頻出単語ですが、意味が分かりますか?
正解は 「大腸カメラのあとに、胃カメラも続けてやる」です。
前処置の関係で、下部を先、上部が後でも、その逆のいずれでもやることがあります。その場合は「上部後下部」になります。 ただし同日に両方できる病院とできない病院があります。
前処置に関する用語
大腸カメラで最も手間がかかるのが前処置です。 看護師さん・技師さんが最初に戸惑うところでもあります。
ブリストルスケールという、便の性状を数字で示すものがあります。
1~7の数字で表され、1番がコロコロの便、7番が水様便です。
例えば、「7番少しカスあり」などと表現されます。
「しっかり形あります」といったように、ブリストルスケールを無視した表現をすることもあります。
伝わりやすい方を使いましょう。
高圧:高圧浣腸のこと。便がまだまだ出ていて、あと一息頑張ってもらいたいときや、下剤がしんどくて服用できない患者さんに使います。
おすすめ書籍
消化器内視鏡介助&看護 パーフェクトBOOK: 器具、薬剤、前処置、観察 まるごと! わかる・できる・ラクになる!
主に看護師さんや技師さん向けですが、内視鏡に関する知識が網羅的に理解できます。もちろん、前処置に関する事項もありますから、ぜひ内容を確認してみてくださいね。
カルテでの実際の書き方
予定・実施
本日 CS 施行
CS 予定(○月○日、前処置:○○)
TCS:盲腸まで到達
所見とセットで
TCS:S状結腸にポリープ2個、EMR施行、回収検体2個提出
CS:直腸に潰瘍性病変あり、生検4個提出
TCS:全大腸に明らかな異常所見なし
フォローアップ
CS f/u 3年後(前回○年○月、ポリープ切除後)
CS f/u 1年後(腺腫多発のため)
胃カメラと併記
EGD/CS ともに施行予定
下部後上部で予定(○月○日)
医師以外のスタッフがカルテを読む場面は非常に多くあります。 看護師さん・技師さん・事務の方が読んで分かるか。 ここを基準に選ぶのが、私は一番大事だと思っています。
よくある質問
Q. CSとCFはどちらが正しいですか? 国際標準はCS(Colonoscopy)です。CFが間違いというわけではなく、 日本の医療現場では今も広く通用します。
Q. CFとは医療で何の略ですか? Colonofiberscopy(大腸ファイバースコープ)の略で、大腸カメラを指します。 ファイバースコープ時代に由来する日本独自の略語です。
Q. GFとCFの違いは何ですか? GFは胃カメラ、CFは大腸カメラです。国際標準はそれぞれEGD、CSになります。
Q. CSとTCSはどう使い分けますか? TCSは盲腸まで到達した場合に使います。途中までしか観察できなかった場合は、 どこまで見たのかを明記することが重要です。
Q. 大腸カメラは英語で何と言いますか? **colonoscopy(コロノスコピー)**です。英語論文では略さず書くのが原則です。
Q. 「下部」とは何のことですか? 下部消化管内視鏡検査=大腸カメラのことです。院内の会話で最もよく使われます。
内視鏡の略語をもっと知りたい方へ
内視鏡室で働く方へ:おすすめ書籍
この記事は、妻(薬剤師)からの「大腸カメラはどうなの?」という 質問がきっかけで書きました。医療者でも診療科が違えば分からない略語は多いものです。
おすすめ書籍
略語だけでなく、内視鏡室の仕事を体系的に学びたい方、特に看護師さんや技師さんむけのおすすめ書籍をご紹介します。
看護師さん・技師さんむけ
NTT東日本関東病院の消化器内科部長、大圃(おおはた) 研先生が書いている本。
大圃先生の書籍は、私たち消化器内科医もわかりやすいので愛用していますが、ついにコメディカル向けの書籍がでたか!と感動を覚えたほど。
内視鏡検査や治療のみでなく、観察ポイントや手技の介助で重要なことなど、非常にわかりやすくまとまっていましたので、私自身も勉強になりました。
そして、医師だけではなく看護師の方も著者にいますから、看護目線でもしっかりと深掘り解説されています。本当におすすめ!
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なお、看護のポイントという点ではこちらの書籍も看護師さんには非常におすすめ。
ちなみにこちらの書籍は先ほど紹介した大圃先生の書籍でも執筆されている、病院の看護師さんが著者になっています!
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出典
- 日本消化器内視鏡学会「消化器内視鏡用語集」 https://www.jges.net/content/glossary
- Gastrointestinal Endoscopy Vol.94, No.6(2021)
※本記事は個人の見解に基づくものであり、上記団体との提携・監修関係はありません。




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