宇宙飛行士は人類の中でも超健康な方たちの集まり、というイメージですが、宇宙ステーションの滞在中には様々な体調変化が起こりうるようです。
今回の論文は、2024年4月にアメリカの雑誌Neurologyに掲載された
Frequency and Clinical Features of Space Headache Experienced by Astronauts During Long-Haul Space Flights
です。
「90%以上の宇宙飛行士が頭痛を経験する」ということと、「頭痛の種類と出現する時期」
について言及した内容です。
この「宇宙頭痛」ですが、この論文で指摘されている頭痛のタイプは地上で言うところの以下の2つです。
- 片頭痛:頭の片側が脈打つような痛み
- 緊張性頭痛:頭の後ろのほうがずーんと重たい感じの痛み
概要
なお、この論文では宇宙滞在中の重力状態を”microgravity”と記載があるため、この記事では無重力状態ではなく、「微小重力状態」としています。
なぜ片頭痛タイプは時間経過とともに減少するのか?
地球から宇宙空間に行くと、重力がほとんどなくなります。(微小重力状態)
そのため、地上では足に多く流れていた血流が頭に流れるようになり、
結果として脳の血流が多くなりすぎることで、宇宙頭痛を発症するようです。
さらに、今回の論文では「鼻づまり」の症状を伴うことが多かったと記載があります。
つまり、宇宙滞在の初期では
- 頭の血流↑
- 鼻の血流も↑
- 鼻の粘膜がむくむ
- 空気の通りが悪くなる
- 鼻づまりが出現する
というわけです。
宇宙滞在の初期では、脳の血流が急激に増加する結果、ズキンズキンと脈打つような片頭痛タイプの痛みが出現します。
その後は人体は環境に適応するため、鼻づまりは改善していくようです。
緊張性頭痛タイプの発症メカニズム
この論文の考察部分で、
“微小重力空間では容易に脳への血流が地上に比べて圧倒的に増加するため、
結果として宇宙頭痛(特に緊張型頭痛が多い)出現すると考えられる”
と記載があります。
なお、脳の血流が明らかに多くなる時、目の奥の「乳頭」という部分もむくみます。
これをうっ血乳頭といいますが、これは
“地上では脳の血流が100mlほど増加しないと出現しにくく、そこまでの脳血流の増加は健康な人では起こりにくい“ ようです。
宇宙滞在から帰還してすぐと、しばらくしてからではその「うっ血乳頭」は改善するようです。
それに加え、”地上へ帰還した3か月後にはすべての宇宙飛行士で症状が改善した”ということから、
頭痛の発症には微小重力状態が脳の血流を大きく変えることが強く関連していた、
と考察されています。
宇宙頭痛の治療法は?
頭痛の対応はロキソニンやアスピリン、カロナールといった鎮痛薬が主流ですが、
人工重力環境や運動、コーヒーの摂取でも宇宙頭痛は改善した人もいるようです。
今回の研究結果から、より有効な治療法の開発を検討されると思います。
私たち地球人の未来を開拓する、宇宙飛行士の方たちの健康ですから、ぜひとも研究を進めていっていただきたいと思います。
おわり
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