スイス旅行で気を付けるべきは高山病!
以前、日テレでウッチャンナンチャンのウリナリ!!というで「マッターホルン頭頂部」の企画がありましたが、覚えてるかたはいらっしゃいますか?
この企画を見て、「スイスに行ってみたい!」と思ったのを覚えています。
スイスには数多くの登山鉄道があり、壮大な山々がそびえるアルプスの景色を楽しむことができるため、多くの観光客に人気です。
特に、登山鉄道ははずせないスポットです。インターラーケン駅(標高567m)からユングフラウヨッホ(標高3,454m)へ向かう列車は、標高差2,887mを約2時間程度で登ります(参考:テレビ朝日HP 世界の車窓から)。
とてもきれいな景色で、是非とも一度は行ってみたいですよね。
しかし、この標高差を移動するときに問題になるのが、高山病(AMS;Acute Mountain Sickness)です。
私自身も、山岳診療部のときに高山病に悩まされたことがありますし、しかも妻はこの登山鉄道で高山病になったようで、
頭痛であまり景色を楽しめなかった、、、、
と言っていました。
高山病は本当にしんどいです。旅行で行ったのに高山病で楽しめないとなお一層悲しいですよね。
なにか予防策はないのか?と疑問に思い調べてみると、インドから論文が出ていたので、紹介です。
前提知識と論文紹介
前提知識:高山病の予防薬、今回の試験で使われた薬の紹介
高山病の予防には、アセタゾラミドという眼圧降下薬が有名です。
しかし、問題点として高山病の予防のためには保険適応上の問題で処方できません。
また、手足のしびれや多尿、頭痛やめまいなど、様々な副作用も報告があります。
これら副作用は高山病の症状にも似ていることがあります。
そこで、イブプロフェン(痛み止めとして広く使用されている薬剤)が高山病の予防薬として使用可能か?、ということが今回の論文での論点になっています。
そこで、今回の論文では
アセタゾラミド vs イブプロフェン vs プラセボ(偽薬)
の3群の比較で、高山病の予防効果について検討しています。
論文の紹介
Ibuprofen Compared to Acetazolamide for the Prevention of Acute Mountain Sickness: A Randomized Placebo-Controlled Trial
Cureus Mar 2024
- 対象患者と方法
- 20-49歳の低値に住むインド人(アジア系)男性が対象
- アセタゾラミド、イブプロフェン、プラセボの3群比較
- それぞれの薬は試験初日から内服を開始し、2日目で標高3,500mまで空輸、その後4日目まで内服を続ける
- 上記によるAMSの予防効果を調べる
- 結果
- AMS発症率はアセタゾラミド12%、イブプロフェン5%、プラセボ12%
- AMS予防効果は解析対象(intention to treat, per protocol解析)や評価法で異なるが、イブプロフェンは大健闘
- イブプロフェンは頭痛の予防に有効、アセタゾラミドは中等度から重度の高山病の予防に有効
- イブプロフェンは副作用が少なかった
なお、この論文は個人的には意義のあるものと思いますが、
統計処理ではとくにITT/per protocol populationの差が大きく、解析対象が事前に決められていなかったなど、疑問な点もいくつかあるので、あくまで参考程度に留めるべきと考えます。
結論:痛み止めを事前に内服するか、近くのクリニックで相談を
この研究はインド人男性に限った研究ではある点がネックですが、低値に住む人を対象にしていたため、少なくとも私たち日本人でも同様のことが言えるかもしれません。
スイス旅行を考えている方、アセタゾラミドだけではなく、イブプロフェンも有効かもしれません。
あくまで予想ですが、通常の痛み止めでも
高山病(特に頭痛)の予防効果がでる可能性があります。
もしかしたら、市販の頭痛薬でも多少は予防できるかもしれません。
私の考える高山病(頭痛)の予防方法として、現実的なのは以下の2点が結論です。
日本のドラッグストアで頭痛薬を買う
近くのかかりつけの医師に頭痛薬やアセタゾラミドの処方を相談する
この2点が重要だと思います。もしよければ検討してみてください。
イブプロフェンがない場合は?
国内だと、イブプロフェンよりはロキソプロフェン(ロキソニン)が一般的です。
頭痛薬として処方してもらうのもいいかもしれませんが、担当のお医者さんと是非相談してみてください。
最後に:現地の高額ぼったくりに注意。日本でしっかり準備を!
現地では高額な謎の高山病予防薬なるものが販売されているようです。
今まで書いてきたように、高山病の予防のためには、事前に薬を内服しなければなりませんので、
「当日飲んだらよくなるよ」といった謳い文句で現地で売っている薬はあまり信用できません。
むしろ、そういうよくわからないものを買うより、しっかりと日本で準備をした方が、この円安の時代で圧倒的にコスパはいいはずです。
スイス旅行に行かれる方、是非とも体調にはくれぐれも気をつけて行ってきてくださいね。
おわり
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