「胃カメラ」の略語はGS? EGD? GF?:違いと国際標準の略語をお伝えします

医学

胃カメラの略語って、医師によっていろいろなものが使われていますよね。

どれが本当なのか、そして何故こんなにたくさんの用語があるのか?
そして、

先生!結局、胃カメラの略って何が一番正しいんですか!?

という質問をよく後輩や看護師さんからされることが多いので、
この記事ではそれぞれの略語の解説に加えて、国際標準の略語についてもお伝えします。

ちなみに、ここに出てくる言葉は全て「胃カメラ」のことを指します。当たり前ですが笑

GS(Gastroscopy):

GSは日本語で直訳すると「胃内視鏡」といったところでしょうか。
食道、胃、十二指腸などの上部消化管を調べるために使う、胃カメラそのものを指すのだと思われます。

ダイレクトな言葉ですし、今まで私はGSが正しいと教わってきました

ただ、実はこれは正式名称ではなかったんです、、、

GIF(Gastrointestinal Fiberscope):

GIFは「消化管ファイバースコープ」を意味し、特にオリンパス社が発売している特定の内視鏡のタイプを指します。例えばGIF-H290など。

オリンパスは日本が世界に誇るない内視鏡メーカーということもあり、GIFはかなり広く使用される略語の一つではないでしょうか。

実は、これも正式な略語ではありません。

GF(GastroFiberscope):

GFもGIFと同様、内視鏡検査で使用される内視鏡機器を示します。

直訳すると「胃ファイバースコープ」ですね。GFは、GIFに似た用語ですが、どちらかというと胃カメラそのものの性質を表現しているように思います。

胃カメラにの中はファイバーの繊維が束になっており、胃の中の情報がそのまま外部へ映し出されるような構造になっています。

1960年代にこの構造が開発され、一気に胃カメラが普及してきた経緯があるため、このGFという略語が浸透したのでしょう。

ちなみにGFも国際基準の略語ではないようです、、、

UGI(Upper Gastrointestinal Imaging/ Upper Gastrointestinal endoscopy)

上部消化管(食道・胃・十二指腸)を写す検査全般を指し示すものです。

UGIの ‘I’ は ‘imaging’ の略です。胃カメラというよりは胃透視像(バリウム検査)のことも含めた略語だと思われます。

どちらかというと、年配の先生が使用されている略語のように思います。

EGD(EsophagoGastroDuodenoscopy)

国際的に用いられる略語として、EGDが標準です。
これはGIE(Gastrointestinal Endoscopy)という、消化器領域の権威ある論文雑誌のなかで消化器の略語一覧に確かに記載があります。
GASTROINTESTINAL ENDOSCOPY Volume 94, No. 6 : 2021

さらに、国際学会や論文でもEGDが一般的に使用されています。

ちなみにですが、日本国内からは日本消化器内視鏡学会が「消化器内視鏡用語集」を発刊しています。
ログイン不要で誰でも確認できますよ。

「日本消化器内視鏡学会 用語集」で検査してみてください!

なお、ここにもEGDが略語として記載されていますので、やはりEGDが標準です。

それぞれの略語がいつ生まれたのか、正しい起源まで詳しくは知りませんが、

胃カメラの黎明期にその検査が国内に広く普及する中で、
いろいろな人が、それぞれの考えで工夫して使ってきたものだと思います。

今回いろいろ調べていくうち、それぞれの略語は先達の知恵、工夫や努力の結果なのだと感じました。
そう考えると、全て統一する必要もないような気もしますが、

医師だけで医療はやっていけませんから、医師以外のスタッフがカルテをみてわかりやすいよう、統一する必要があると思います。

この記事を見た方々が、少しずつご自身の医療機関で正しい略語を徐々に浸透させてくれれば嬉しいです

結論として、後輩やコメディカルの人に「胃カメラの正しい略語を教えて」と聞かれた時は

EGDが正式な略語ですよ!」

と伝えたいと思います。

なお、他の記事では大腸カメラやERCPに関連した略語もまとめています。もしよければご確認ください。

これらの記事が、皆さんの普段の診療の助けになれば嬉しいです。

大腸カメラの略語はコチラ↓

ERCPの略語はこちら↓

おわり

dr-infoblog

30代の消化器内科医。普段は某大学病院で消化器がんの診療・研究をしています。妻と1歳の子供との3人暮らし。地元の公立小中学を卒業し、高校・大学受験。私立大学医学部を奨学金を使って卒業。そんな医師の普段の生活にまつわるあれこれを記事にします。

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