以前、他病院へ出向していた際にTAZ/PIPC(タゾバクタム・ピペラシリン、商品名:ゾシン)の使用中に血小板が0.1/10^7まで低下した症例を経験しました。
そもそもそんな現象は存在するのか?
代替薬はどうすればいいのか?
といった観点から、その時に調べた症例報告論文の紹介です。
薬剤誘発性血小板減少症はアレルギーや免疫学的機序が関与しているため、
構造式が類似していなければ(交差アレルギーがないと考えられれば)
投与可能なのかもしれないです。
注意:あくまで個人の意見です。個々の症例において適応可能な理論かは、十分に検討するようにしてください。
症例報告論文 代替薬はCFPMだった
Cefepime challenge after piperacillin/tazobactam‑induced thrombocytopenia
Journal of Thrombosis and Thrombolysis (2019) 48:167–170
米国の施設からの報告。
この症例は下腿骨折後でDVT予防でエノキサパリンを投与中。
誤嚥性肺炎で入院し、挿管管理。初回抗菌薬としてTAZ/PIPCが開始され、第11病日に血小板は0.2万を下回った。
その時に橋出血(脳幹部の出血)がCTで確認され、TAZ/PIPCによる薬剤誘発性血小板低下症が疑われた(他疾患をどのように除外したのかは記載なし)。
第12病日にはデキサメタゾン(ステロイド剤)に加え、脳出血があったことからIVIG(免疫グロブリン静注療法)も実施し、TAZ/PIPCの中止後には速やかに血小板数は改善。
CFPM(セフェピム、マキシピーム)が代替薬と使用されたが、特に副作用・有害事象はなかった。
薬剤誘発性血小板減少症の診断:アレルギーが関与
下記のアルゴリズムを参考にするといいですが、ややこしいので紹介のみ。
アレルギーや免疫関連などの影響が考えられるといった内容。
- the Naranjo algorithm
- the Begaud algorithm
- the Yale algorithm
- the Jones algorithm
- the Karch algorithm
- the ADRAC
- the WHO-UMC16
- the quantitative approach algorithm
抗菌薬の交差アレルギー反応について
関連はありませんが、徳山医師会病院のDIニュースに、抗菌薬の交差アレルギー反応に関する記事がありました。
今回の症例報告でCFPM使えた理由は、この構造式の違いが関連しているのかもしれません。
ちなみにこれ、救外の当直やってる研修医の先生とかにお勧めです。
抗菌薬アレルギーのある患者さんは比較的よくみかけますからね。
Drug Information NEWS NO.433 2021年1月 徳山医師会病院 薬局
(URLをクリックまたは「交差アレルギー 抗菌薬 表」で検索してください。)
おわり
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