医学部受験を考えている方や、奨学金の返済が始まったばかりの臨床研修医の皆さん、こんにちは。
今回は、私自身が医師として働き始めてから
「奨学金の返済を通じて感じたこと」についてありのままをお伝えします。
もしも誰か1人だったとしても、これを読んで医師を目指すきっかけになる人がいれば幸いです。
私が奨学金を借りたのは、日本学生支援機構の第二種奨学金(有利子、利率見直し方式)で、月額16万円を6年間借り、総額1,152万円でした。研修医として働き始めた26歳から、毎月約4.5万円を240回に分けて返済していく予定でした。
これはあくまで個人の経験談です。実際の奨学金の条件や返済額、支払い期間は借入額や利率計算方法などにより異なりますので、ご自身で確認していただくよう、お願いいたします。
奨学金返済開始後の研修医生活は?
大学を卒業し、研修医になった4月当時の月手取りは30-40万円ほど。(月4-5回の当直あり、時間外もフルに申請したあとの金額。)
毎月4万5千円、240回分割払いの利率見直し方式で奨学金の返済が始まりました。
果てしなく遠い遠い、永遠とも感じるほどの返済生活の始まりでした。
家賃は7万5千円の1K、通勤10分。他には携帯とwifi契約、水道光熱費に加えて、奨学金の4万5千円の支払いでしたから、あわせてだいたい16万円ほどは最低で支出として出ていくことになるため、自由に使えるお金はだいたい15万円ほど手元に残る計算です。
そこから食費、交際費がかかります。男の一人暮らしでしたので、食費は最低月3-4万円くらい、同僚との食事や遊びに行ったりしたのもそうですし、各科ローテーションの際に参考書を割と購入していたので、実際の貯蓄額は月平均0-10万円程度だったでしょうか。
項目 | 金額(円) |
---|---|
手取り収入 | 300,000 |
家賃(管理費込) | 75,000 |
光熱費・通信費 | 20,000-25,000 |
食費 | 3-40,000 |
奨学金返済 | 45,000 |
書籍、交際費 | 50,000-100,000(月による) |
残高 | 結局あまり貯まらない |
これだけの給料をもらっていたにもかかわらず、びっくりするくらい、貯金たまりませんでした。
学生時代はバイト代で電車定期や携帯代を支払っていたので、急にこんなにもらったら使っちゃいますよね、、、汗
ちなみに、研修医時代のボーナスは「2」でした。2ヶ月分ではありません。2万円です。
研修医時代を過ごすうえで最も大切なこと
お金はあまり貯まりませんでしたが、今思えばあまり節約について考えなくても、お金の心配はあまりせずに過ごすことができたのはとても良かったと思います。
また、貯蓄するよりも、お金を勉強のために使っていたことがよかったなと思っています。
研修医生活は2年、長いようであっという間です。
今臨床医として働いていて思うのは、
研修医の期間に、見たこと、学んだこと、経験したこと、感じたことの全てが、
これからの医師人生において、医者としての最も重要な基礎になるということです。
この2年という短い期間に、どれだけのモチベーションで勉強し、仕事をし、患者さんとどのように接していくのかを深く考えられるか、
これが将来の自分医師としての姿勢、ひいては力量が決まるといっても過言ではありません。
もちろん、研修医を終えてから、必ずしも全員が臨床医(病院に勤めること)になるわけではありませんし、研修医時代の稼ぎを他の何かに使う方もいると思います。
ただ、私自身の意見としては、
研修医時代には無目的に「貯金」をするのではなく、医師としての自分に対して「先行投資」をすべき、ということです。
お金を貯めるという行為は自分自身のためだと思います。でも、研修医時代にやった医療の勉強は、いつかはたくさんの患者さんに還元することのできる資産になります。
自分の学びになる参考書を買うなり、勉強会に出席するなり、(医療に関連する)資格取得にお金をかけるほうが有意義だと思います。
そうすることで、これからの人生の可能性は間違いなく広がるからです。
(なお、研修医なら救急対応の知識が身に付くACLSかICLS、小児版のPALSはお勧めです。ぜひ受けてほしいです。優秀な方ならUSMLEなどでしょうか、私は存在すら知りませんでした。)
ただ、これだけ書いていてなんですが、ちゃんと息抜きもしてました。勉強と仕事しかしていないわけではありませんよ。
研修医時代は理想の医師像を考える重要な時期
そもそも頭の出来は平凡な私なので、こんなに偉そうなことは言えませんが、そのようにして自己投資をしている人が、将来的には
「患者さん一人ひとりの人生を考えて学び、行動できる医師」
になれると思います。私の尊敬する先生もそうですし、常に学んでいる人ほど、その傾向が強いように感じます。
いずれにせよ、自分のこと中心でなく、
患者さん中心で動けること
これが医療者として働く上で最も大事なことだと、研修医時代を通じて強く感じるようになったと思います。
この記事を書いていて忘れたくなかったこと
意識的にではなかったですが、奨学金という足かせがあった中で、今振り返ってみると、
「奨学金の返済を通じて、良い収入ではなく、医師として何か大事なものを得たい」
ということを研修医時代にはずっと考えていたこと、さらには
「患者さんを中心に考え、自ら学び行動できる医師になる」
という理想の医師像を形成していく上で重要な2年間だったとも思います。
これから先、どんどん忙しくなる中で理想から外れていきそうになる瞬間もあると思います。
それでも、
「研修医時代の自分に恥じないような、そういう医師でありたい」
というのは、今でも日々考えていることの一つです。
綺麗事のようですが、このような理想を常に持ち続けることで、日々の診療で迷ったときに、どうすれば良いのかを決められる道標になっているという、確かな実感があります。
これから医師を目指す方、研修医の先生方、今は具体的なイメージはつかないかもしれませんが、こういった理想の医師像(自分の医師としてのスタンス)をきちんともつ、ということが重要であることは知っておいてくださいね。
つづく
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